【徹底比較】TMS治療保険診療の課題と解決

[2020.05.13]

日本の保険診療の課題

皆さん、こんにちは。 東京TMSクリニックの田中 奏多と申します。

私はハーバード大学TMSコースを修了し、日本でも珍しいTMS治療を専門的に診療する医師です。

2019年6月「TMSが保険診療化」されます。しかしながら対象となるのは、「うつ病の患者さん」、「1剤以上の抗うつ薬で効果が得られなかった方」などであり、全体の3割程度の患者さんしか適応になりません。

また、いろいろな制度の問題からTMS治療が保険適応されても、残念ながらTMS治療の恩恵を受ける人は限定的であると考えます。

当院では世界におけるTMS治療の最前線治療対象領域とその適応、非適応基準に従って、今回の保険診療適応とならない方もTMS治療を受けられるように、分析を重ねながらTMS治療を保険診療になる前から行ってきました。

2019年の時点で日本人に対する1000症例以上のTMS治療の経験があり、 欧米人との違いから「日本人に合わせたTMS治療」 を独自に分析しながら改良を重ねてきました。

社会的な視点として今回の制限が大きいTMS保険診療化をみると、「医療費増加」、「不適切なTMS治療の抑制」という2軸の狙いがあったと考えます。

当院のような世界におけるTMS治療の最前線治療対象領域とその適応、非適応基準に従ってTMS治療の適応を保険診療で広げると、「医療費増加」は避けられず、TMS治療に明るくない医療者がTMS治療を行うと「不適切なTMS治療が広がり、コントロールができなくなる」という問題が発生すると考えます。

また、治療を受ける患者さんから「毎日バス20分は通えない」、「1日1時間治療でつぶれるのは続けられない」、「TMS治療の予約が連続で取れない」という声もあります。

当院では、「山手線恵比寿徒歩1分」「1治療、来院から帰りまで20分と働きながらの方でも治療ができるTMS」「遠方からの短期集中治療」、「時間が空いた時に予約ができるような予約システム」と、患者さんがTMS治療の恩恵を受けやすいように日々ブラッシュアップしています。

非薬物療法のTMS治療とは?

TMS治療は薬物療法と電気けいれん療法の間にある治療と位置付けています。

お薬で自分の状態に効果がえられない方や、電気けいれん療法は記憶が飛んでしまうのが困る、身体の状態が不安定で麻酔がかけられないという方も受けられる治療となっています。

ただ、週5回の治療を4~6週連続で継続する必要があるという患者さんの負担などのデメリットはあります。そのため当院では「働く人に合わせたTMS治療」という軸で、学術的な視点からTMS治療の刺激方法や治療機器の工夫をこの数年積み上げ続けています。

保険診療TMS治療の課題と東京TMSクリニックの対応

さて、「TMS治療が保険適応されても、残念ながらTMS治療の恩恵を受ける人は限定的である。 」とお話しした理由をさらに患者さんの視点から少しお話ししたいと考えています。

大きく3つ(細かいことを言うともっとあるのですが)の理由と対応に分けてお話しいたします。

  1. TMS治療開始まで半年から即日治療開始へ
  2. 入院治療のTMS治療より安く、専門的なTMS治療を可能に
  3. 期間から、1か月以内の短期集中の通院TMS治療へ
保険診療と自由診療のTMS治療費用比較

当院は小さな医療機関です。

小さな医療機関だからこそ、お一人お一人の状態に合わせたTMS治療を行い、より高い治療効果、費用対効果を目指す。

本当に必要な人が、本当に必要な専門的な治療を、安価に、短期的に受けることで社会に貢献する。

そのために上記3つを日本で最初のTMS治療専門クリニックとして実現しました。

  1. TMS治療開始まで半年から即日治療開始へ

保険診療のTMS治療はTMS治療の開始まで2021年11月の時点で初診が半年待ちの病院もあります。

保険診療の場合、まず治療ができるかできないかの初診を受けるまでが長いです。

以下、保険診療を行っているA病院に取材をしてどんな状態か聞いてみました

  1. 2週間:かかりつけ医から診療情報提供書の発行をお願いする
  2. 3-6か月:初診までの待機:A病院の例
  3. 3~6か月:入院待機:コロナ禍ということもあり入院の制限をしている
  4. 予定が立たない:突然連絡が来て1-2週後から入院できると電話で連絡をもらう
  5. 1か月:入院後調整:検査や必要に応じて薬物調整などを入院中に実施してから治療を開始する
  6. TMS治療開始

保険診療の場合、TMS治療を受けたいと思ってから、トータル:半年~1年程度かかります。

当院では、TMS治療を受けたいと思った際に オンライン問診 、オンライン相談で事前にTMS治療が受けられる可能性が高いかを判断しています。

うまくいくと、TMS治療初診申し込みをした即日から翌日、その週の土日などに診療、その後すぐに治療を開始できることも多いです。

  1. 入院治療のTMS治療より安く、専門的なTMS治療を可能に

保険診療のTMS治療は1回1,200点(12,000円)の保険点数がついています。

海外ではTMS治療1回あたり$200から$300(20,000円ー30,000円)の料金であり、日本のTMS治療はとても安く設定されています。

高い初期費用のかかる機械代と精密に治療をしようと思えば思うほど、教育費、人件費がかかるTMS治療をすればするほど医療機関は赤字になってしまいます。そのため、保険診療のTMS治療は2-3か月の長期入院によりTMS治療を行うことで入院費を追加することで採算がとられています。

入院のTMS治療は、高額療養費制度が適応となります。

しかしながら東京の平均年収である平均年収615万で考えると保険診療TMS治療の自己負担は自由診療のTMS治療と変わらない、むしろ高額な治療費になります。

当院では以下の料金でTMS治療を実施しており、保険診療のTMS治療の半額に近い費用で専門的なTMS治療を提供しています。

  1. 2-3か月の入院TMS治療から、1か月以内の短期集中通院TMS治療へ

入院のTMS治療がより全国で進んだ理由としては、コロナ禍で毎日の通院で感染可能性が高くなるよりも入院で外出制限がかかっている状態のほうが感染症:インフェクションコントロールがしやすいということもあるかもしれません。

一方、TMS治療を受けたい社会で生活をしている人にとっては突然2-3か月の入院をするということは大変なハードルになります。

当院では、専門的な治療が受けたいけれど、日々の生活をしながら治療がしたいという方に向けて入院治療ではなく、外来診療でのTMS治療を行っています。

より多くの人に治療を実施することで回転率を上昇させ、安価に、より症例が集まるので経験を積み、 専門的なTMS治療の提供を行っております。少し時間が空いた時や、休日に短期集中治療ができるようにTMS治療の台数、枠の調整を日々行っています。

また、 ハーバード大学TMSコースを修了した医師が在院すること 、日本よりも進んだ研究や臨床が実践されている海外の専門家から直接指導、教育指導、技術指導を頻回に行うことで高い専門性を維持しています。

保険診療化をどのようにみますか?

適切な保険診療化だったと考えています。

TMS治療はアメリカやヨーロッパでは、中等度以上のうつ病に対する標準的な治療の一つにすでになっています。保険診療化されたことでTMS治療が日本でも標準的な治療の一つとして認識されるという大きな一歩となりました。

今回の保険診療は、対象の患者さん、施設基準、刺激方法の制限はあるものの、「TMSを適切に日本に広める」という軸からは的を得た保険診療化だったと考えています。

一部の医療者からはTMSは『打つだけ』のような声があります。私も初めてTMS治療を知った時はこんなパチパチするだけで治るのかな…と懐疑的に感じました。

しかしながらこの数年、「日本人に合わせたTMS治療」を試行錯誤しながら作り上げ、当院での日本人に対する1000以上の症例をもって分析したところ、TMS治療は適当に『打つだけ』では治療効果は乏しく、実は大変繊細な治療だということが初めてTMS治療を行ってから数年経験を積み重ねてやっとわかってきました。

日本には海外での専門的なTMS治療の教育を受けた医療者が少ない

TMSはまだまだ新しい技術です。

日本精神神経学会は「適切なTMS治療」と「エビデンスを集積する」という使命を持ってTMS治療の保険診療化を進めてくれました。

しかしながら、日本に専門家が少ない中、もし制限を持たない保険診療化で、保険診療を契機にTMSに明るくない治療者がTMS治療をすることになれば、適切なTMS治療がなされないケースも出てくるかもしれません。

エビデンスを作るためには、順番が重要です。治療も対象も不安定では、しっかりしたデータは作れません。まずは医療者側の治療基盤を整えるという意味で小さくても確実にしっかり広がり、洗練化、標準化されることがケースの拡大よりも先に重要だと考えます。

私は、ハーバード大学TMSコース修了し、医師として世界におけるTMS治療の最前線治療対象領域とその適応、非適応基準に従って当院のTMSチームと一緒にTMS治療を構築しています。

当院のTMSチームには、精神科教授、神経内科認定医、麻酔科専門医、臨床工学技士がおり、各々の専門性をもって協議しながら「日本人に合うTMS治療」を組み立て、数年かけて洗練化をしてきました。日本に専門家がほとんどいない中、運よく東京でこれ以上にないTMSチームの知見を統合することができています。

日本の他大学病院の先生方や、ハーバード大学を経由した世界のネットワーク、臨床でTMS治療を実践してきた世界に広がる先生から指導を受けながら「日本人にあわせた適切なTMS治療」を構築しています。導入初期と比較し、30%を超える治療効果の改善がみられるなど、現在は初期とはくらべものにならない精度の治療を行えるようになっています。

適切なエビデンスを国や医療界がつくっていくために、そして保険診療の維持のためにも、対象から外れる方達の受け皿が必要と考えています。「保険診療に見合う高い質をもつTMS治療」「患者さんがTMS治療の恩恵を受けやすい」ようになる受け皿として、私たちはTMS治療を今後もブラッシュアップしていきます。

東京TMSクリニックのTMS治療の特徴

保険治療としてTMS治療が広がることをどう思いますか?

一人のTMS治療者としてTMS治療が日本に広がることは喜ばしいと感じています。

当院は入院施設がないため自殺企図がある方や精神状態がかなり悪い状態の方など、地域の中核病院での治療が適した患者さんは速やかに地域中核病院にご紹介するという決まりがクリニックにあり、治療をお断りさせて頂いたり、病院を紹介させていただいておりました。

しかしながらTMS治療ができる病院は限られた病院しか今までご紹介ができず、家から遠い病院を紹介され、結果離脱してしまうというケースもあり、心苦しく感じていました。今回の保険診療化で連携できる病院が増え、患者さんがより治療を受けやすい環境となることは非常に嬉しく感じています。

TMS治療のセカンドオピニオンを受けることも多く、複数人の同じクリニックに通われた患者さんからお話しを聞くと、必ずしも「適切なTMS治療」が行えているクリニックは多くはないと感じています。

TMSとはどのような治療なのか、どのように治療をすすめていくのかなどの的確な情報提供、外来でのTMS治療には、本人の心身の状態、仕事の状態、家庭の状態なども含めて<Shared Decision Making>で患者さんと一緒に治療を検討していくことが非常に重要になります。

東京TMSクリニックは、「社会に必要な医療を新しいモデルで提供する」ことから、社会で働く人を支え日本を支える医療を提供することを目的に臨床を行っています。当院でのTMS治療は「2030年の日本の医療」に必要な一つの医療として導入しています。

今後の日本、そして世界の医療の未来に、必要不可欠な治療と考えます。そのためにも、適切なTMS治療が日本へ広がることを願っています。

田中 奏多 院長|東京TMSクリニック(恵比寿駅・心療内科)|東京ドクターズ (tokyo-doctors.com)