What is QEEG
脳の使い方の「癖」を可視化する
体の使い方の癖が肩こりや腰痛、頭痛につながることがあります。同じように、脳の使い方にも癖があります。ネガティブなモード、不安のモードから抜け出せず、そこに留まり続けてしまう。QEEG(定量脳波)は、こうした脳の使い方の特徴を画像と数値にする検査です。
脳の神経細胞が出すごくわずかな電気の変化を、頭皮に付けた電極で記録したものが脳波(EEG)です。
QEEGは、デジタル記録された脳波を数学的・統計的に解析することで、脳波のさまざまな特性を数値化して表示する技法の総称です。臨床の場では、そのうち安静時の脳波の周波数解析と、健常な方のデータを集めた「規範データベース」との比較を行う検査を指して、QEEG検査と呼ぶことが多くなっています。

「同じ診断名でも、脳の癖は同じではない」
診断名は、症状のまとまりに付けられた「呼び名」です。同じ「うつ病」と呼ばれる状態でも、脳の使い方の癖は人によって異なります。
QEEGは、その診断名の中にある個人差を数値としてとらえるための検査であり、診断名そのものを決めるための検査ではありません。この線引きが、QEEGを正しく使ううえでの出発点です。

QEEGは、その人の脳波の特徴(個人差)を数値として示すところまでを担います。診断名は、症状・経過・診察に基づいて決まります。
How it works
規範データベースとZスコア
QEEG検査が「同年代と比べてどうか」を示せるのは、あらかじめ健常な方の脳波を集めた比較用のデータベースを持っているからです。順を追って説明します。
- 1
脳波を記録する
国際10-20法という決まりに従い、頭皮上の19箇所(機器によってはさらに多くの電極)から、安静にして目を閉じた状態と、目を開けた状態の脳波を記録します。
- 2
周波数帯域ごとの強さを計算する
電極ごとに、デルタ(δ)・シータ(θ)・アルファ(α)・ベータ(β)といった周波数帯域別の強さ(パワースペクトル)を計算します。
- 3
規範データベースと比べる
あらかじめ、数百人から千数百人規模の健常な方の脳波から、部位別・帯域別の分布を求め、年齢別の比較用データ(規範データベース)を作っておきます。受けた方の数値を、これに照らしてZスコアという「平均からどれだけ離れているか」を表す値に変換します。
- 4
頭部の図に色で表示する
Zスコアを頭部の図(トポグラフ)に色で表します。たとえばある部位が「3σ」と示された場合、それは同年代の健常な方の99.7%が示す値よりも大きい、という意味です。あわせて、左右の半球の差、部位どうしのつながりを見るコヒーレンス解析、タイミングのずれを見る位相解析なども図として表示できます。
Zスコアは「同年代の平均と比べてどうか」を表す数値であって、病気の有無を表す数値ではありません。
平均から外れているという結果は、そのまま異常や病気を意味しません。
通常脳波検査との違い
| 項目 | 通常の臨床脳波検査 | QEEG検査 |
|---|---|---|
| 主に見るもの | 医師が波形を目で読み、てんかん波などの異常所見の有無を判断する | 記録した脳波を数値化し、同年代の規範データベースと比べて偏りを示す |
| 記録・報告の条件 | 保険医療機関の通常診療として行われ、記録・判読の基準がある | 賦活法の有無、モンタージュ(電極の組み合わせ)の設定、報告書に記載する事項などで異なる点が多い |
| 位置づけ | 保険診療として実施される | 頭皮の脳波を記録し、その結果に基づいて医療行為を行う点では脳波検査の一種。日本では保険診療として認められていない |
※ QEEGはCT・MRIの代わりにはなりません。脳梗塞や脳腫瘍など、器質的な病変が疑われる場合は、CT・MRIによる検査をおすすめします。
Individuality, not Diagnosis
QEEGで分かること
QEEGを「病名を当てる検査」と考えると、期待外れになります。
日本臨床神経生理学会の委員会報告は、QEEG検査単独の結果に基づいて、ADHDをはじめとする神経発達症や精神疾患の臨床診断を行う道具として使うべきではない、と明確に述べています。
一方で、その人の脳波が同年代と比べてどう違うかという個人差の記述としては、意味のある情報が得られます。
個別性を見るために使えること
- ○その人の脳波が、同年代と比べてどの帯域・どの部位で偏っているかを数値で示す
- ○治療の前後で、脳波の基礎的なリズムがどう変わったかを数量的に追う
- ○波形を目で読む際に、軽度の左右差など見落とされやすい点へ注意を促す補助にする
QEEGにはできないこと
- ×ADHD・自閉スペクトラム症・うつ病などの確定診断
- ×脳波の数値だけで「病名を決める」こと
- ×心の状態や性格を数値で言い当てること
- ×治療の効果や必要な回数を事前に確定させること
- ×脳梗塞や脳腫瘍など、病変があるかどうかを判定すること
同じ診断名の中に、違う脳の癖がある
ADHD & Theta/Beta Ratio
脳波でADHD診断?
QEEGの話題で最もよく登場するのが、シータ波とベータ波の比(シータ/ベータ比、TBR)とADHDの関係です。ここは、規制当局の判断と学会の評価が食い違って見えるため、混乱しやすいところです。経過を追って整理します。
| 時期 | 出来事 | 読み取り方 |
|---|---|---|
| 1970年代 | 脳波によって神経精神疾患を自動的に診断する方法として、Johnらが提唱(当時は「ニューロメトリクス」と呼ばれた)。 | 構想は古くからありましたが、その後広く普及することはありませんでした。 |
| 2006年 | メタ解析により、DSM-IVで診断されたADHDの子ども1,498名と健常児の前頭・中心領域のシータ/ベータ比を比較。ADHD児で統計的に有意に高い値が示された(効果量3.08、感度94%、特異度94%)。 | この結果が、後の米国での機器認可につながりました。ただし後述のとおり、その後の研究では差が小さくなっています。 |
| 2013年 米国FDA | 正中中心部(Cz)のシータ/ベータ比が6〜17歳のADHDの診断補助に有効であるとして、QEEG検査システムをクラスIIの医療機器として認可。 | 同時にFDAは、臨床医が済ませた臨床評価の裏付けとしてのみ使うべきで、ADHDの評価や診断に単独で用いることはできないと注意を付しています。 |
| 2016年 米国神経学会 | 米国神経学会(AAN)の委員会が、ADHD診断におけるシータ/ベータ比の有用性を検討した診療勧告を公表。標準的な臨床評価だけの場合と比べて、シータ/ベータ比を組み合わせることが診断の確実性を高めるかどうかは不明、と結論。 | 勧告として、①シータ/ベータ比と前頭部βパワーの組み合わせは標準的な臨床評価に取って代わるものではないと患者・家族へ伝えるべきこと、②偽陽性が多いためADHDと誤診された方に実質的な害を及ぼすリスクがあること、③研究の場を除き、診断の確定にも臨床評価後のさらなる検査の裏付けにも用いるべきではないこと、が示されました。 |
| 2022年 | この2016年の勧告が、同年10月に再確認された。 | 評価は現在も維持されています。 |
| その後の 研究 | ADHDの診断バイオマーカーとしてのQEEGについては、肯定的な知見は少なく、否定的な報告が大半を占めています。共通して指摘されているのは、①シータ/ベータ比による診断の偽陽性率の高さ、②1990年代〜2009年の研究に比べ、2010年以降の研究では健常群とADHD群の差(効果量)が年を追って小さくなっていること、の2点です。 | 数値が高い=ADHD、低い=ADHDでない、とは言えません。 |
| 近年の レビュー | 成人(18歳以上)のADHD診断に関する21編の論文をまとめた2020年のレビューは、診断ツールとしての可能性は認めつつ、現時点での使用は推奨できないと結論。1996〜2017年のQEEG関連516編から信頼性の高い33編を選んだ包括的レビューも、QEEGの異常が小児精神疾患の非特異的な指標なのか、疾患の種類を見分けられるものなのかは、まだ不明としています。 | 研究は続いていますが、診断に使える段階には至っていません。 |
※ FDAの認可は米国での機器規制上の判断であり、日本での保険適用や診断基準を意味するものではありません。日本では、QEEG検査自体が保険診療として認められていません。
Limitations
検査の限界
以下は、当院でQEEGを受けていただく前に知っていただきたい点です。
- 1偽陽性(本当は異常でないのに異常と判定されること)が起こりやすい。
個人差を数値にする検査である以上、「同年代の平均から外れている」という結果は出やすくなります。平均と違うこと自体は、病気を意味しません。 - 2比較の土台となる規範データベースには幅がある。
QEEG検査システムを製造・販売する企業は複数あり、データベースの作り方は同一ではありません。年齢ごとの被験者数が十数名から百名程度にとどまるという指摘もあります。「同年代と比べて」という表現の重みは、この土台の規模に左右されます。 - 3雑音(アーチファクト)の影響を受ける。
まばたき、筋肉の動き、体の動き、眠気などが混じると数値は変わります。
電極の付け方、服薬、睡眠不足、カフェイン、飲酒、その日の体調によって脳波は変化します。記録条件が整わないと判断した場合、日をあらためてお願いすることがあります。
Why we use QEEG
ベスリのQEEG
診断に使わないQEEGを、ベスリはなぜ行うのか。手がかりは、ここまで引用してきた同じ委員会報告のなかにあります。
同報告は、QEEGを診断の道具として使うことには明確に否定的である一方、QEEGという手法そのものは統計学的に健全であり、その人の脳波の特性や、治療に伴って脳波の基礎的なリズムがどう変化したかを数量的にとらえる方法としては有用であるとも評価しています。
つまり、否定されているのは「QEEGで病名を決めること」であって、「その人の脳波の特徴を数値でとらえること」や「治療に伴う脳波の変化を数値で追うこと」ではありません。ベスリは、この後者の範囲でQEEGを行っています。
目的1
ニューロフィードバック(NFB)
- ○NFBは、自分の脳波の状態をリアルタイムで見ながら、脳の使い方を調整していく訓練です
- ○「どの脳波を、どの部位で、どう変えていくか」という訓練目標を決めるには、その人の脳波の特徴を数値で把握する必要があります
- ○脳の癖が人によって違う以上、訓練の目標も個別に決める必要があります
- ○訓練の前後で、脳波の基礎的なリズムがどう変わったかを確認する材料にもなります
- ×NFBの効果は、対象や条件によって評価が分かれています。効果をお約束するものではありません
目的2
個別化TMS治療
- ○TMS治療は、どこを・どの周波数で・どのくらい刺激するかによって内容が変わる治療です
- ○脳の使い方の癖は人によって違うため、QEEGで把握した個別性を、刺激部位・刺激法を検討する材料のひとつとして用います
- ○治療の前後で脳がどう変わったかを確認する材料にもなります
- ○最終的な刺激法は、症状・経過・診察とあわせて医師が決定します
- ×QEEGに基づいて刺激法を選ぶことが治療成績を改善すると確立されたわけではありません

QEEGは、治療を組み立てるために使う
Who is it for
よくあるご相談
QEEGは、どなたにも必要な検査ではありません。
次のようなご相談があったとき、QEEGをおこなうかどうかを一緒に検討します。
よくあるご相談
- ○TMSやニューロフィードバックを検討していて、自分の脳波の特徴を知りたい
- ○TMS治療で右脳・左脳などどこを刺激するのか、低頻度刺激がよいか、高頻度刺激が良いか自分に合う刺激法を客観的に知りたい
- ○薬物療法以外の選択肢も含めて、治療の組み立てを相談したい
- ○なんとなく集中できない、気力が出にくい状態が続いている
- ○頭が重い、ぼんやりする(ブレインフォグ)状態が続いている
- ○不安、いらだち、意欲の低下が続いている
- ○治療の前後で、脳波の状態がどう変わったかを確認したい
Flow
検査の流れ
QEEGは、頭皮に電極を付けて安静時の脳波を記録する、身体を傷つけない検査です。
- 1
初診のご予約
当院はご予約制です。まずはWebの初診予約フォームからお申し込みください。この時点でQEEGを予約する必要はありません。
- 2
問診・診察
症状、経過、これまでの治療、生活での困りごとを確認します。QEEGを行うかどうか、行う意味があるかは、この診察をふまえて判断します。
- 3
検査の説明とご予約
検査を行う場合、目的(NFBの目標設定か、TMS治療の刺激法の検討か)と限界をご説明したうえで、あらためて検査日をご予約いただきます。診察と同じ日に実施できるとは限りません。
- 4
脳波の記録
頭皮に電極を付け、安静にした状態で脳波を記録します。記録にかかる時間は、おおむね30分〜1時間です。電気や磁気を身体に流す検査ではありません。
- 5
解析
記録した脳波を解析ソフトで数値化し、年齢別の規範データベースと比較してZスコアに変換します。左右差、コヒーレンス、位相の解析結果もあわせて図として表示します。
- 6
結果の説明と、治療の検討
結果の一部を当日中にお伝えできる場合もありますが、詳しい説明は後日となることがあります。
検査を受ける前に
- ○前日はできるだけ洗髪し、当日は整髪料の使用を控えてください。電極が付きにくくなり、記録の質に影響することがあります
- ○ヘルメット型の機器を使用するため、締め付けにより多少の痛みや圧迫感を感じる場合があります
- ○睡眠不足、カフェイン、飲酒、服薬、体調によって脳波は変わります。当日の状態は遠慮なくお伝えください
- ○服用中のお薬は自己判断で中止せず、事前にご相談ください
当日の体調や睡眠の状況によって結果は変わります。記録条件が整わないと判断した場合、日をあらためてお願いすることがあります。
Price
QEEG検査の費用
日本では、QEEG検査自体が保険診療として認められていません。そのため当院でも自費診療として実施しています。実施は神田院(ベスリクリニック東京)のみです。
| 内容 | 回数 | 料金 |
|---|---|---|
| QEEG検査 | 1回 | 16,500円(税込) |
| QEEG検査(治療前後の2回) | 2回 | 22,000円(税込) |
※ 2回のセットは、治療の前後で脳波を記録し、その人の脳波がどう変化したかを確認するためのものです。脳波の変化がそのまま治療効果を意味するわけではなく、症状・経過とあわせて評価します。
※自費診療です。診察料は別途かかります。最新の料金は神田院へお問い合わせください。
受ける回数と時期について
初回は、TMS治療の刺激法やNFBの目標を検討するために行います。その後は、治療の経過を確認する目的で、一定回数の治療を行った時点で再検査することがあります。時期や回数は症状と経過によって異なるため、個別にご相談します。
FAQ
よくある質問
References
参考にした資料
このページの、QEEGの定義・解析のしくみ・ADHD診断バイオマーカーとしての評価・日本における現状に関する記述は、主に次の資料に基づいています。
- 日本臨床神経生理学会 神経精神疾患バイオマーカー検討委員会「注意欠如・多動症の診断バイオマーカーとしてのQEEG検査の現状と問題点」臨床神経生理学 53巻6号 694–700ページ、2025年(委員会報告)
- 上記報告が引用する、米国FDAの機器認可文書、米国神経学会(AAN)の診療勧告、アメリカ神経精神医学会(ANPA)の臨床指針、および関連するメタ解析・系統的レビュー
当院の診療方針、検査の目的、費用、実施体制に関する記述は、上記資料の見解ではなく、当院の方針としてお伝えしているものです。
Supervised by
この記事の監修者
田中 伸明(たなか のぶあき)
医療法人社団ベスリ会 ベスリクリニック 総院長/専門:心療内科・神経内科・睡眠障害内科
「こころ・脳・身体」の観点から状態を分解し、再発しない形で社会に復帰し、自立して働ける未来を目指す診療を行っています。
プロフィール:besli.jp/staff.html / メディア:besli.jp/for-press-media.html
Reservation
検査の前に、まず診察を
QEEG検査は神田院(ベスリクリニック東京)のみで実施しています。どの検査が必要か、そもそも必要かを含めて、まず診察でご相談ください。
ベスリクリニック東京(神田)
本ページは情報提供を目的としており、診断・治療方針は個々の状態により異なります。QEEGは診断を確定させる検査ではなく、脳波の個別性(個人差)を把握するための検査です。日本ではQEEG検査自体が保険診療として認められていません。TMS治療・ニューロフィードバックは個人差が大きく、効果を約束するものではありません。検査の内容、費用、主なリスクについては、診察の際に個別にご説明します。
監修:田中 伸明(医療法人社団ベスリ会 総院長)/公開日:2026年7月14日/最終更新日:2026年7月28日