TMS治療 / 保険診療と自由診療
保険診療のTMS治療は
なぜ
働く人に届きにくいか
日本でTMS治療(反復経頭蓋磁気刺激療法)がうつ病の保険診療に加わって6年。有効性を示すデータは国内でも積み上がってきました。それでも実施件数は伸び悩み、その大半は入院で行われています。
「薬を十分に試したうえで」「入院で」「平日の日中に毎日」という条件は、働きながら治療を続ける人にとって、そのまま高いハードルになります。制度の流れをたどりながら、その理由を整理します。
Self Check
こんな行き詰まりはありませんか
TMS治療に関心を持ちながら、制度や生活の事情で足踏みしている方が少なくありません。当てはまる項目にチェックを入れてみてください。
History
日本のTMS治療がたどった道のり
TMS治療(反復経頭蓋磁気刺激療法/rTMS)は、頭部に置いたコイルに反復して通電し、変動磁場から生じた誘導電流で大脳皮質を刺激する治療です。全身麻酔や筋弛緩薬を使わず、認知機能への影響も生じないとされる点が、電気けいれん療法(ECT)との大きな違いです。制度としては、次のような歩みをたどってきました。
日本におけるTMS治療の制度上の歩み
承認から6年、少しずつ条件は緩和されてきました
- 2008年10月
米国食品医薬品局(FDA)が、薬物治療抵抗性うつ病に対するrTMSを承認。
- 2017年9月
日本で薬事承認。
- 2019年6月
治療抵抗性うつ病に対するrTMSが1,200点で保険収載。国内のうつ病に対するTMS治療の保険診療が始まりました。
- 2023年
rTMS適正使用指針の改訂で実施者基準が緩和され、看護師などメディカルスタッフがより多くの治療場面で関与できるようになりました。
- 2024年6月
診療報酬が1回1,200点から1回2,000点に引き上げ。あわせて、前半15回・後半15回をそれぞれ4週以内に実施できるようになり、連休を含む期間にも対応しやすくなりました。
- 2024年7月
従来のNeuroStar TMS治療装置に加え、Hコイルを用いるBrainsway TMSシステムも保険診療の適用に。
- 2025年6月
保険診療でrTMSを実施している医療機関は、全国で約80施設。
診療報酬の引き上げや実施者基準の緩和は、いずれも普及への追い風と位置づけられています。
それでも実施施設は全国約80施設にとどまっているのが現状です。
林大祐「反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の最近の動向」精神科臨床Legato 11(2):35-39, 2025 / 山本大地ほか「鳥取大学医学部附属病院における反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の実施状況報告」米子医誌76:15-20, 2025
TMS治療は、どこに位置する治療なのか
TMS治療は、薬物療法と電気けいれん療法(ECT)の間に位置づけられる治療です。お薬で十分な効果が得られない方、ECTでは記憶への影響が気がかりな方、身体の状態が不安定で麻酔をかけられない方にとっての選択肢になり得ます。
薬物療法・TMS治療・ECTの位置づけ
身体への負担と、効果の現れ方が異なります
TMS治療は、全身麻酔や筋弛緩薬による処置が不要で、認知機能障害の副作用も生じないとされる点がECTとの大きな違いです。
一方で、週5日の治療を3〜6週間、主に入院をして続ける必要があるという、患者さん側の時間的な負担があります。
鬼頭伸輔「治療抵抗性うつ病に対するニューロモデュレーション療法の実際と課題」Depression Strategy 13(2):11-13, 2023(表1 各ニューロモデュレーション療法の比較) / 林大祐、前掲(精神科臨床Legato 11(2):35-39, 2025)
Route
保険診療でTMS治療を受けるまでの経路
保険診療のrTMSには、対象となる方の条件が明確に定められています。「うつの症状があればすぐ受けられる治療」ではなく、薬物療法を十分に行ったうえで効果が得られなかった場合に検討される位置づけです。
保険診療のrTMSに至るまで
条件を一つずつ満たしていく必要があります
中等症以上のうつ病(18歳以上)
抗うつ薬を至適用量で十分な期間投与
時間がかかるそれでも効果が不十分(治療抵抗性)
実施施設を探す(全国約80施設)
施設が限られる多くは入院で3〜6週間の治療
仕事を離れるそれぞれの段階は医学的な根拠に基づくものですが、働きながら治療を受ける立場から見ると、通過するのに時間と生活の調整を要する関門が重なっている構造でもあります。
保険診療での主な条件
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる方 | 抗うつ薬による十分な薬物療法によっても期待される治療効果が認められない、中等症以上の成人(18歳以上)のうつ病。ここでいう「十分な薬物療法」とは、1剤以上の抗うつ薬を至適用量で十分な期間投与することを指します。 |
| 絶対禁忌 | 刺激部位に近接する金属をお持ちの方/心臓ペースメーカーをお持ちの方 |
| 適応外とされる場合 | 明らかな認知症、器質性あるいは症状性の気分障害を呈する場合/うつ病エピソード(中等症以上)の診断基準を満たさない場合/精神病症状をともなう重症エピソード、切迫した希死念慮や緊張病症状などECTが推奨される症状を示す場合 |
| 治療期間 | 週5日、3〜6週間の実施が一般的です。3週(計15回)の時点で効果判定を行い、改善があれば6週(計30回)まで継続するという運用が報告されています。 |
※ 適応の可否は、実際の診察と各医療機関の判断によります。
鬼頭伸輔「治療抵抗性うつ病に対するニューロモデュレーション療法の実際と課題」Depression Strategy 13(2):11-13, 2023 / 山本大地ほか、前掲(米子医誌76:15-20, 2025)
Why
保険診療が広がりにくい4つの理由
保険収載から数年たっても実施件数が想定を下回っている背景には、いくつかの構造的な要因が指摘されています。
Reason 01
施設基準を満たせる医療機関が限られる
保険適用上の設置基準を満たせるのは、精神科病院と大学病院がほとんどというのが導入初期からの状況でした。さらに、現在の算定要件では、診療所など無床の医療機関は実質的に診療報酬を請求できないとされています。通いやすい場所にある無床のクリニックでは、保険診療としてのrTMSを提供しにくい仕組みになっています。rTMSの実施施設が全国約80施設にとどまっている背景の一つです。
Reason 02
実施者基準というもう一つの関門
施設基準とは別に実施者基準があり、学会講習とメーカーの企業講習の双方を受講する必要があります。導入初期には学会講習が年2回、いずれも東京開催に限られており、ボトルネックになっていると指摘されていました。2023年の適正使用指針改訂で実施者基準は緩和され、看護師などメディカルスタッフが関与できる範囲は広がっています。
Reason 03
採算の見通しが立ちにくい
導入に伴う費用と期待される収益を踏まえた医療経済的な観点から、踏み切れない施設が多いと推察されています。実際の運用でも、1回の刺激につき1セットおよそ1万円のコイルカバーを使い捨てで使用し、実施中はスタッフ1名が付き添う必要があるため、人件費を含めるとrTMS自体が収益につながる治療ではないと報告されています。2024年6月の1回2,000点への引き上げで、実施しやすくなったとは言えます。
Reason 04
入院治療が必要
施術そのもので採算が取りにくいとなると、入院料と組み合わせて全体で成り立たせるかたちに向かいやすくなります。実際、施設によってはrTMS治療を実施する際に個室料の発生する個室に入室するといった工夫をしている、とも報告されています。医療機関としては合理的な判断ですが、結果として患者さんの側に「入院」という前提が生まれます。制度上どこにも「入院で受けること」とは書かれていないにもかかわらず、実際には入院が標準的な受け方になっている──その背景には、こうした採算の構造があります。
ECTとrTMSの実施件数(2020年度)
同じニューロモデュレーション療法でも、実施件数には差があります
わが国でrTMSが上市されてから日が浅く単純な国際比較はできないものの、想定されていた実施件数からみても相当に少ないと指摘されています。その理由として、保険診療における算定要件の厳しさや診療報酬の低さが、普及の障壁になっていると考えられています。
ECT治療は全国の精神科医療機関で広く行われており、2024年には全国で10万回以上実施されています。これに対し、保険診療でrTMS治療を実施している医療機関は、2025年6月現在で全国約80施設です。
同じうつ病に対するニューロモデュレーション療法でありながら、受けられる場所の数には大きな差があります。
実施回数から逆算すると、この差はさらにはっきりします。2023年度の保険診療でのrTMS算定回数は、全国で約10,700回でした。これを実施施設数(約80施設)で割ると、1施設あたり年間およそ130回という計算になります。rTMS治療は1人あたり計15〜30回のセッションを行うため、1施設が1年間に対応できているのは、おおむね数名から10名程度という規模感です。
当院では2021年の時点で、TMS治療5,000症例の実績がありました。自由診療と保険診療では集計の対象も方法も異なるため単純に比べられるものではありませんが、保険診療でのTMS治療は、まだ限られた規模にとどまっていると考えられます
算定回数・実施施設数は厚生労働省NDBオープンデータおよび林大祐、前掲(精神科臨床Legato 11(2):35-39, 2025)による。1施設あたり・1人あたりの人数は、当院が公表値から機械的に割り戻した概算です。算定回数は2023年度、施設数は2025年6月時点のもので集計時期が異なり、実際の1人あたりの実施回数も個々の経過によって変わるため、幅をもってご覧ください。
厚生労働省のNDBオープンデータによると、2020年度のECT(修正型)とrTMSの実施件数は、それぞれ85,421件と3,640件でした。日本でrTMSが上市されてから日が浅く単純な国際比較はできないものの、想定されていた実施件数からみても相当に少ないことがわかる、と指摘されています。その理由として、保険診療における算定要件の厳しさや診療報酬の低さが、普及の障壁になっていると考えられています。
出典:鬼頭伸輔、前掲(Depression Strategy 13(2):11-13, 2023)/厚生労働省 NDBオープンデータ
保険収載の翌年に行われた座談会でも、rTMSを「導入済み」と回答した割合はわずか2.6%、「導入予定または導入を検討する」も10.3%にとどまっていました。導入しない理由としては、装置を扱う人的リソースの問題と費用対効果がネックになっている傾向がみられ、「精神科診療所でrTMS装置を購入すること自体が難しい」という現場の声も挙がっています。参考として、米国ではrTMS 1回の治療費が250ドル前後(州により異なり、安くても200ドル程度)とされ、日本の保険収載額は海外に比べて少ないことが当時から指摘されていました。
出典:座談会「ニューロモデュレーションの現状と展望」Depression Journal 8(1):11-15, 2020 / 2020年時点のアンケート結果であり、その後の状況は変化しています。
Data
データで見る「入院に偏る」現状
rTMSの診療報酬算定回数は年々増えています。ただしその内訳を見ると、大半が入院での実施です。
rTMS診療報酬算定回数の内訳
増えているのは、主に入院での実施
2022年度は約6,300回(外来695回/入院5,585回)、2023年度は約10,700回(外来1,322回/入院9,147回)。総数は増えているものの、外来での実施は全体の1割強にとどまります。この背景には、現在の算定要件では診療所など無床の医療機関で実質的に診療報酬請求が不可能になっている点があると考えられており、rTMSの対象となる患者層を考えると、外来での治療アクセス向上が今後の課題と指摘されています。
「件数」と「人数」は、同じではありません
ここで注意したいのが、NDBオープンデータの数字が算定回数(延べのセッション数)であって、治療を受けた人数ではないという点です。rTMSは3週間で15回、6週間なら30回のセッションを行う治療ですから、1人の患者さんが年に十数回から30回分を計上することになります。
そこで、2023年度の算定回数10,469回(外来1,322回+入院9,147回)を、1人あたりの回数で割り戻してみます。
| 1人あたりの回数(前提) | 推計される実人数 | 該当する状況 |
|---|---|---|
| 15回 | 約700人 | 3週間で治療を終了した場合 |
| 20回 | 約520人 | 途中まで実施した場合を含む |
| 30回 | 約350人 | 6週間を完遂した場合 |
※ 当院による単純計算です。年度をまたいで治療を受けた方、途中で中止した方、複数回のクールを受けた方は考慮していないため、実際の人数とは異なります。
つまり、保険診療でrTMSを受けられているのは、日本全国で年間おおよそ数百人規模という計算になります。うつ病の患者数の規模を思えば、保険収載から6年が経ってもなお、この治療の恩恵を受けられている方は限られている、ということになります。
林大祐、前掲(精神科臨床Legato 11(2):35-39, 2025)/厚生労働省 NDBオープンデータ
人数の推計は、公表されている算定回数から当院が試算したものです。
Barrier
働く人にとってのハードル
制度上の課題は、そのまま「働きながら治療を受ける人」の負担として現れます。実際の運用報告から、その具体像を整理します。
1. 入院が前提になりやすい
ある大学病院の報告では、rTMSは全例入院で施行されています。外来でrTMSの適応が判断され、適応ありとされた場合にrTMSおよび入院の待機リストに挙げられ、病床に空きが出た段階で入院となる、という流れです。入院後に血液検査や頭部画像検査を行って身体因性のうつ状態でないことを確認し、うつ症状の重症度評価をつけたうえで、主治医と病棟スタッフが適応を判断します。
丁寧な手順である一方、働いている方の視点では「順番待ちの期間」と「入院期間」が二重にのしかかることになります。
2. 平日の日中に、毎日
実施に際しては、初回の治療セッションの前に刺激部位の位置決めを行い(30〜45分程度)、続いて初回のセッション(45分程度の治療刺激)を行います。その後は平日の日中に毎日治療セッションを行い、3週間終了時点(祝日がなければ計15回)で効果判定を行います。改善があれば4週目以降も継続し、計6週間(計30回)で終了となります。
2024年6月以降は、前半15回・後半15回をそれぞれ4週以内で実施できるようになり、大型連休を含む期間にも対応しやすくなりました。とはいえ、平日日中に毎日という枠組み自体は変わりません。フルタイムで働きながら3〜6週間これを続けるには、休職や長期の有給取得が現実的な前提になります。
3. 「薬を十分に試してから」という順序
保険診療の対象は、抗うつ薬による十分な薬物療法によっても効果が認められない場合です。この「十分な薬物療法」を積み重ねる間に、年単位の時間が過ぎることは珍しくありません。実際、ある施設の報告では、rTMSを受けた7症例の抑うつエピソードの罹病期間は6か月から11年とばらつきが大きく、7例中5例は2年を超えていました。
同じ報告の中で、「今のところ当院でのrTMS実施例は“最終手段”のような治療選択となりがちであったが、より早く適切な段階での治療導入がなされることで、より良い治療転帰を迎えられることを期待したい」と述べられています。エピソード期間が短い方がより効果が高いという報告もあり、導入のタイミングは今後の検討課題とされています。
5. 「受けたい」と思ってから、実際に始まるまで
見落とされやすいのが、待機の時間です。保険診療でrTMSを受ける場合、かかりつけ医への相談と診療情報提供書の発行から始まり、初診の待機、入院の待機、入院後の検査・薬物調整を経て、ようやくTMS治療の開始にたどり着きます。当院が保険診療を行っている病院に取材した内容では、それぞれの段階に数週間から数か月を要し、合計で半年から1年程度かかるという状況でした。
治療開始までにかかる時間
同じTMS治療でも、たどる道のりの長さが違います
保険診療の場合
かかりつけ医に相談・診療情報提供書の発行
約2週間初診の待機
1〜6か月入院の待機
3〜6か月入院連絡・準備(保証人・限度額認定証など)
2〜4週間入院して検査・薬物調整
約1か月入院でTMS治療
1〜2か月「受けたい」と思ってから治療開始まで 半年〜1年程度
当院(自由診療)の場合
オンライン問診・相談で、受けられる可能性を事前に確認
数日初診。医師の診察で可否を確認し、同日にTMS治療を試せます
1日外来で通いながら治療
2〜6週治療後のフォロー・メンテナンス
継続可保険診療側の期間は、当院が保険診療を行っている病院へ取材した内容に基づく一例です。医療機関・地域・時期によって大きく異なり、2024年6月の診療報酬改定以降は入院期間の運用も変わりつつあります。当院の期間も、実際は状態やご予約の状況によって前後します。
6. 通える場所にあるとは限らない
2025年6月現在、保険診療でrTMSを実施している医療機関は全国で約80施設です。居住地や勤務地の近くに実施施設があるかどうかで、選択肢の有無が大きく変わります。
また、実際に通い始めてからも「毎日バスで20分は通えない」「1日1時間、治療で時間がつぶれるのは続けられない」「予約が連続で取れない」といった声を、当院ではしばしばうかがいます。週5回を4〜6週続けるという枠組みそのものが、働く方には負担になりやすい治療です。
山本大地ほか、前掲(米子医誌76:15-20, 2025)/林大祐、前掲(精神科臨床Legato 11(2):35-39, 2025)/鬼頭伸輔、前掲(Depression Strategy 13(2):11-13, 2023)
1施設の実施状況報告を含みます。運用は医療機関により異なります。
Evidence
それでも効果は示されている
届きにくさとは別に、国内の実臨床データではrTMSの有効性が報告されています。「広がっていないから効かない」ということではありません。
国内多施設共同観察研究の結果(497名)
全国21施設、保険診療でrTMSを受けた治療抵抗性うつ病患者
これらの結果から、本邦の臨床場面においても治療抵抗性うつ病に対しrTMSが有効であることが示されました。評価尺度の違いはあるものの、先行する米国のデータベース研究と同等の結果とされています。効果の現れ方には個人差があり、改善を保証するものではありません。
2019年6月〜2023年12月に全国21施設で、rTMS適正使用指針に則って保険診療のrTMSを受けた治療抵抗性うつ病患者497名を解析した研究では、治療前後のHAMD-17(ハミルトンうつ病評価尺度17項目版)が18.9から9.7へ有意に減少し、反応率53.5%、寛解率42.8%でした。これは、評価尺度の違いはあるものの、先行する米国のデータベース研究と同等の結果とされています。最も多い副作用は刺激部痛で173名(43%)に認められましたが、副作用による治療中止は18名(4.3%)で、全般的に良好な忍容性を示しました。
出典:Matsuda Y, et al. Psychiatry Res. 2024;342:116263(林, 2025 の紹介による)
国立精神・神経医療研究センター病院と東京慈恵会医科大学附属病院で、2018年9月〜2022年10月に保険診療でrTMSを受療したうつ病患者50名を対象とした前向き観察研究では、rTMS開始後3週で寛解率36%・反応率46%、6週後で寛解率60%・反応率78%でした。また、抗うつ効果と、副作用である刺激部痛の時間的変化に有意な相関が認められ、刺激部痛が治療反応の予測因子として有用である可能性が示唆されています。
出典:Hayashi D, et al. Neuropsychobiology. 2024;83:152-9(林, 2025 の紹介による)/非盲検の単群試験である点に注意が必要とされています。
うつ病は再燃・再発しやすい疾患であり、急性期のrTMS後の維持療法も課題とされています。急性期rTMS療法の長期効果を調べたメタ解析(18試験732名)では、治療反応者の反応率は3ヵ月後66.5%、6ヵ月後52.9%、12ヵ月後46.3%であり、長期効果に寄与する因子の一つとして維持rTMS療法の受療が示されました。一方、日本では急性期6週間を超えたrTMSは保険診療で認められていないため、2022年5月より先進医療Bとして多施設共同研究が進行中です(2025年6月現在、全国22施設が参加)。
出典:林大祐、前掲(精神科臨床Legato 11(2):35-39, 2025)/鬼頭伸輔、前掲(Depression Strategy 13(2):11-13, 2023)
Compare
保険診療と自由診療の違い
TMS治療には、保険診療で受ける道と、自由診療(自費診療)で受ける道があります。どちらが優れているという関係ではなく、条件・費用・通い方が異なる別の選択肢です。ご自身の状態と生活に合うのはどちらか、という視点で比べていただくのが実際的です。
2つの道 ── 条件と通い方の違い
費用の負担と、生活への負担の置きどころが違います
保険診療
条件が定められている
- 治療抵抗性うつ病が対象
- 開始まで半年〜1年の例も
- 多くは入院で3〜6週間
- 維持療法は保険の対象外
3か月入院なら総額48万〜127万円の試算
自由診療
通い方の自由度がある
- 診察のうえで適応を判断
- 初診と同日に試せる場合も
- 外来で、夜間・土日も
- 治療後の維持も継続可
全額自己負担/20回コース110,000円
保険診療の条件に当てはまり、入院や3〜6週間の通院時間を確保できる方には、保険診療でのrTMSという選択肢があります。
当院でも、その方に適していると判断される場合には、保険診療を行っている医療機関についてご説明します。
| 項目 | 保険診療のTMS治療 | 当院の自由診療のTMS治療 |
|---|---|---|
| 対象 | 抗うつ薬による十分な薬物療法で効果が認められない、中等症以上の成人(18歳以上)のうつ病 | 診察のうえで個別に適応を判断します |
| 受け方 | 報告では入院での実施が中心。算定回数の約9割が入院 | 外来で受けていただけます |
| 時間帯 | 平日の日中に毎日のセッション | 平日は夜まで、土日も診療しています |
| 施術1回の費用 | 2024年6月より1回2,000点(=20,000円)。3割負担で6,000円、自立支援医療などで1割負担の場合は2,000円 | 単回6,600円/10回券なら1回あたり4,950円(税込) |
| 施術以外にかかるもの | 診察料・検査料に加え、入院で行う場合は入院料・食事療養費・差額ベッド代など | 初回相談料11,000円(初回施術は無料) |
| 治療開始までの待機 | 診療情報提供書の準備、初診待ち、入院待ちを経て、半年〜1年程度かかる例が報告されています | オンライン相談から、初診と同日に開始できる場合もあります |
| 維持(メンテナンス)療法 | 急性期6週間を超えたrTMSは保険診療で認められていません(先進医療Bとして検証中) | 診察のうえで継続してご案内できます |
| 実施施設 | 2025年6月現在、全国約80施設 | 東京駅となり神田駅・横浜駅となり桜木町駅:2院 |
※ 保険診療の運用は医療機関により異なります。詳細は各医療機関にご確認ください。
費用の見え方 ── 施術の単価と、その外側
「保険が使えないから高い」と受け取られることがありますが、TMS治療の場合は少し事情が異なります。保険診療のrTMSは2024年6月に1回1,200点から1回2,000点(=20,000円)へ引き上げられました。窓口での自己負担は割合に応じて変わり、3割負担なら1回6,000円です。
一方、当院の自由診療のTMS治療は単回6,600円、10回券なら1回あたり4,950円(税込)です。施術1回あたりの単価だけを取り出して並べると、次のようになります。
| TMS治療1回あたり | 金額(施術分のみ) | 備考 |
|---|---|---|
| 保険診療(3割負担) | 6,000円 | 1回2,000点=20,000円の3割 |
| 保険診療(1割負担) | 2,000円 | 自立支援医療(精神通院医療)などが適用される場合 |
| 当院・単回(自費) | 6,600円 | 2回目以降。初回施術は無料 |
| 当院・10回券(自費) | 4,950円/回 | 10回券49,500円 |
※ いずれもTMS治療の施術分のみを比べたものです。実際にかかる金額は、診察料・検査料・入院関連費用などを含めた総額で変わります。保険診療の自己負担割合、自立支援医療の適用、高額療養費制度の利用状況によっても異なります。
施術単価だけを見れば、当院の10回券(1回4,950円)は保険診療を3割負担で受けた場合の1回6,000円を下回る水準です。
入院で受ける場合、総額はどうなるか
保険診療のrTMSは入院での実施が中心です。入院の医療費には高額療養費制度があり、ひと月あたりの自己負担には所得区分に応じた上限が設けられています。
| 所得区分(年収の目安) | ひと月あたりの自己負担限度額 |
|---|---|
| 年収約1,160万円〜 | 252,600円+(総医療費−842,000円)×1% |
| 年収約770〜約1,160万円 | 167,400円+(総医療費−558,000円)×1% |
| 年収約370〜約770万円 | 80,100円+(総医療費−267,000円)×1% |
| 〜年収約370万円 | 57,600円 |
| 住民税非課税 | 35,400円 |
※ 70歳未満の方の区分です。制度は改定されることがありますので、最新の内容は加入されている健康保険にご確認ください。
ここで一つ、押さえておきたい点があります。2024年6月にrTMSの点数は1回1,200点から2,000点へ引き上げられましたが、高額療養費制度の対象となる入院では、上限額を超えた分の自己負担は1%にとどまります。そのため、点数の引き上げは医療機関の収支には効いても、患者さんのひと月の自己負担額そのものを大きく変えるわけではありません。
むしろ総額を左右するのは、高額療養費の対象にならない費用です。食事代、日用品、そして差額ベッド代は制度の対象外で、いずれも入院が長引くほど積み上がります。
| 入院1か月あたりの内訳 | 目安 | 高額療養費の対象 |
|---|---|---|
| 治療費の自己負担 | 約84,600円 | 対象(上限あり) |
| 食事代 | 約45,900円 | 対象外 |
| 日用品の購入費など | 約30,000円 | 対象外 |
| 差額ベッド代 | 0〜約264,000円 | 対象外 |
※ 年収約370〜770万円の区分(東京都の平均年収を想定)で試算した一例です。差額ベッド代は大部屋0円/2人部屋8,800円/日として計算しています。食事代は入院時食事療養費の標準負担額(一般所得区分・1食510円)を1日3食×30日として計算した概算で、金額は改定されることがあります。実際の金額は医療機関・病室・在院日数により大きく異なります。
入院1か月あたりの自己負担の内訳
総額を左右するのは、高額療養費の対象外の費用
高額療養費制度が効くのは治療費の部分だけです。食事代・日用品・差額ベッド代は制度の対象外で、入院が長引くほど積み上がります。2024年6月の点数引き上げ分も、上限を超えた部分の自己負担は1%にとどまるため、この構造は大きく変わりません。
ひと月あたり 約160,500円(大部屋)〜 約424,500円(2人部屋)
rTMSは検査・薬物調整を含めると2〜3か月の入院になることもあります。ここに、休職に伴う収入の変化が加わります。
当院のコース費用
当院のTMS治療は、10回を1クールとしてご案内することが多い治療です。初回相談料と回数券を合わせた場合の目安は次のとおりです。
| コース | 内訳 | 合計(税込) |
|---|---|---|
| TMS治療 10回 | 初回相談料 11,000円 + 10回券 49,500円 | 60,500円 |
| TMS治療 20回 | 初回相談料 11,000円 + 10回券 49,500円 × 2 | 110,000円 |
| TMS治療 30回 | 初回相談料 11,000円 + 10回券 49,500円 × 3 | 159,500円 |
※ 初回施術は無料です。必要な回数は状態により異なり、診察のうえでご相談します。回数券には有効期限があります(初回購入から1か月、2回目購入分は3か月、3回目以降は6か月が目安)。QEEGやSGLなどを併用する場合は別途費用がかかります。
保険診療で受ける場合の負担
同じ回数を保険診療で受けた場合、外来か入院かで負担の性質が変わります。外来で受けられる場合は施術分の窓口負担が中心ですが、入院となると、施術分以外の費用が総額を大きく押し上げます。
| 受け方 | 回数・期間 | 自己負担の目安 |
|---|---|---|
| 外来で受ける場合 (施術分のみ) | 30回 | 3割負担 180,000円 1割負担 60,000円 |
| 入院で受ける場合 | 2か月 | 約321,000円(大部屋) 〜約849,000円(2人部屋) |
| 入院で受ける場合 | 3か月 | 約482,000円(大部屋) 〜約1,274,000円(2人部屋) |
※ 外来の金額は1回2,000点(=20,000円)に窓口負担割合を掛けた施術分のみで、診察料・検査料は含みません。自立支援医療(精神通院医療)が適用される場合は1割負担となります。入院の金額は年収約370〜770万円の区分で試算した一例(治療費の自己負担・食事代・日用品・差額ベッド代の合計)で、高額療養費制度の適用後の額です。医療機関・病室・在院日数により大きく異なります。
当院・TMS治療 20回 110,000円 / 保険診療・入院3か月 約48万〜127万円
施術1回あたりの単価だけを比べると、両者に大きな開きはありません。差が生まれるのは、入院を伴うかどうかです。そこに休職に伴う収入の変化が加わることを含めて考える必要があります。一方で、外来で保険診療を受けられる環境があり、自立支援医療が適用される方であれば、保険診療のほうが負担は軽くなります。ご自身がどの条件に当てはまるかで結論は変わりますので、初診時に一緒に確認します。
入院での実施が中心になっている背景には、医療機関側の事情もあります。高い初期費用のかかる装置代に加え、丁寧に治療を行うほど教育費・人件費がかかるため、rTMS単体では収支が合いにくいのが実情です。実際、1回の刺激につき1セットおよそ1万円のコイルカバーを使い捨てで使用し、実施中はスタッフ1名が付き添う必要があるため、人件費も考慮するとrTMS自体が収益につながる治療ではないと報告されています。施設によっては、個室料の発生する個室に入室するといった工夫をしているとも報告されています。
出典:山本大地ほか、前掲(米子医誌76:15-20, 2025)/入院費用の試算は当院による概算であり、実際の金額を保証するものではありません。
Why Besli
ベスリを選ぶ理由
当院は「働く人が、仕事を止めずに治療を続けられること」を軸にTMS治療をご案内しています。
外来で、平日夜・土日も
仕事を止めずに通うために
専用センターに複数の機器をそろえ、平日夜20時まで+土日も診療しています。間隔を空けずに通う必要がある方も、1日3回の短期集中(aTMS)で一気に整えたい方も、仕事を止めずに通えます。
短期集中治療について →
明朗な料金
続けやすい価格で無理なく
初回相談料は11,000円で、初回施術は無料です。TMS治療は2回目以降1回6,600円、10回券なら49,500円(1回あたり4,950円)。営利を目的とせず、より多くの方に良い医療を届けたいという考えから、続けやすい料金にしています。
- 初回施術 無料
- TMS治療10回券 4,950円/回
- 自費・明朗会計
東京・横浜に
好アクセス
仕事帰り・外出のついでにも
東京院は東京駅からアクセスしやすい神田、横浜院は桜木町駅からすぐで横浜駅からも1駅の好立地です。どちらも仕事帰りや外出のついでに通いやすく、平日は夜まで、土日も診療しています。
- 東京駅アクセス
- 横浜駅から1駅
- 平日夜・土日も診療
Pricing
治療の費用
当院のTMS治療は保険適用外の自由診療(自費診療)です。初回相談料は11,000円(税込/初回施術は無料)で、神田・横浜の両院とも同額です。
| 内容 | 初回 | 単回(2回目以降) | 10回券(1回あたり) |
|---|---|---|---|
| TMS治療(θburst/rTMS) | 無料 | 6,600円 | 4,950円/回(49,500円) |
※ 神田・横浜 共通の自由診療(自費)料金(税込)。最新の料金は各院にお問い合わせください。
回数券には有効期限があります。TMS治療回数券は初回購入から1か月、2回目購入分は3か月、3回目以降の購入分は6か月が目安です。回数券の払い戻しはできません。
WEB予約を推奨しています。WEB予約は予約時間の2時間前まで、電話・受付・LINEでのご予約は2日前までキャンセル可能です。前日・当日のキャンセルは1回分の施術料金を頂戴する場合があります。
FAQ
よくある質問
Q.TMS治療とは、どのようなものですか?
Q.保険でTMS治療を受けられるのはどんな場合ですか?
Q.保険診療のTMS治療は、どのくらい通う必要がありますか?
Q.なぜ保険診療のTMS治療は入院が多いのですか?
Q.働きながら保険診療のTMS治療を受けるのは難しいのでしょうか?
Q.自由診療のTMS治療は、保険診療と何が違いますか?
Q.自費だと費用が高くなりませんか?
コース単位では、当院はTMS治療10回で60,500円、20回で110,000円、30回で159,500円(いずれも初回相談料11,000円を含む。初回施術は無料)です。保険診療を外来で30回受ける場合の施術分は3割負担で180,000円、自立支援医療などで1割負担なら60,000円となります。
大きく変わるのは入院を伴う場合です。年収約370〜770万円の区分で試算すると、入院3か月でおよそ48万円から127万円(大部屋〜2人部屋)となり、休職に伴う収入の変化も加わります。ご自身の条件で結論が変わりますので、初診時に一緒に確認します。
Q.TMS治療を受けられる医療機関は、どのくらいありますか?
Q.保険診療だと、治療開始までどのくらい待ちますか?
Q.TMS治療に副作用はありますか?
Q.効果はどのくらい続きますか?
Q.効果は必ず出ますか?
Q.どちらの院で受けられますか?診療時間は?
Supervised by
この記事の監修者
田中 伸明(たなか のぶあき)
医療法人社団ベスリ会 ベスリクリニック 総院長/専門:心療内科・神経内科・睡眠障害内科
「こころ・脳・身体」の観点から状態を分解し、再発しない形で社会に復帰し、自立して働ける未来を目指す診療を行っています。
働く人の心の診療実績
TMS治療(薬に頼らないうつ治療)
著書・監修書籍
メディア出演・掲載・講演
プロフィール:besli.jp/staff.html / メディア:besli.jp/for-press-media.html
Reservation
仕事を止めないまま、
次の一手を考える。
まずは問診で、これまでの治療経過と今の状態を一緒に整理します。保険診療と自由診療のどちらが適しているかも含めて、診察のうえでご説明します。TMS治療初回施術は無料です。
ベスリクリニック東京(神田)
ベスリTMS横浜醫院
本ページは情報提供を目的としており、診断・治療方針は個々の状態により異なります。本文で紹介した制度・統計は2026年8月3日(更新日)時点で公表されている資料に基づくものであり、今後変更される可能性があります。当院のTMS治療は自由診療であり、効果を約束するものではありません。診療時間・料金は変更されることがありますので、最新の情報は各院の公式サイトでご確認ください。
公開日:2020年5月13日/更新日:2026年8月3日
監修:田中 伸明(医療法人社団ベスリ会 ベスリクリニック 総院長)