ストレス食いの薬に頼らないTMS治療
~エモーショナルイーティング~

[2020.09.05]

「ストレス発散で食ベてしまう」、「食べても食べても満足感がない」、「うつうつとした気持ちを解消するためにむちゃ食いをしてしまう」、「ストレス解消法がない」そんなお悩みはありませんか?

それは「ストレス食い」、「エモーショナルイーティング」、「むちゃ食い障害」という状態かもしれません。

つい、食べ過ぎてしまうことは日常でもよくあることです。

しかしながら、自分の感情がむしゃくしゃする、不安になったときに逃避をするために食べることは健康的ではありません。

「ストレス食い」をしてもストレスが解消されず、大量に食べることで悲しさ、怒り、孤独などの感情やストレスの解消になっている「エモーショナルイーティング(Emotional Eating)」が続く場合は注意が必要なこともあります。

「ストレス食い・エモーショナルイーティング・過食」セルフチェックリスト

  • 机の中やカバンにいつもお菓子を置いている
  • 味わわずに一度にたくさんの量を食べる
  • 気晴らしを食べることに求めてしまう
  • 限界まで満たさないと不安になる
  • ストレスを感じるといつのまにか食べ物に手が伸びてしまう
  • 食べた後に罪悪感を感じる
  • お腹いっぱいなのに 食欲が止まら ない

「ストレス食い・エモーショナルイーティング・過食」の原因・機序

「エモーショナルイーティング(Emotional Eating)」は自分の心身を満たすための食事ではなく、心を一時的に慰める食事です。「エモーショナルイーティング(Emotional Eating)」は解消しなければならない問題の根本原因は解決しません。

エモーショナルイーティングの脳の状態

過食傾向がある人の研究では背外側前頭前野(DLPFC)の活動が低下し、認知制御の機能が低下してしまったために過食衝動を抑えられないと考えられています。

落ち込み・不安・寂しさ・不満・イライラなどのストレスを感じているときには、ぐるぐる思考のネットワークであるDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)が過活動になり、背外側前頭前野の機能が低下します。

“食べる”行為は、手軽にストレスを解消し、DMNから離れることができるため、エモーショナルイーティングを繰り返してしまいがちです。

食べることで、ぐるぐる思考のネットワークが抑制されてストレスへ思考が集中している状態から、食べることに思考を移動することができます。

しかしながら、そのストレスに対する根本的な治療にはつながりません。

「エモーショナルイーティング」や「ストレス食い」は習慣化すると、自分ではコントロールができなくなります

参照

ストレス関連疾患としての摂食障害 – 脳画像研究によるアプローチ –

佐藤康弘*, 福土審*,**

*東北大学病院心療内科, **東北大学大学院医学系研究科行動医学分野

心身医学 57(8): 790-796, 2017.

過食・エモーショナルイーティング・ストレス食いとTMS治療

薬に頼らない脳に対するTMS治療では背外側前頭前野(DLPFC)の刺激により、「ストレス食い」の調整を行います。

TMS治療は「食べたい」という過食衝動をコントロールすることに効果があり、食事量の調整ができる可能性があります

※クリックすると拡大します。

ストレス食い・エモーショナルイーティングになりやすい人

  • ストレス解消がうまくできない
  • ストレスがたまると甘いものや油ものなどのメニューをむちゃ食いしてしまう
  • 結果を出そうと頑張りすぎてしまう
  • うまく自分の感情を相手に伝えることができない
  • 周囲の人からいい人といわれる

食べ過ぎのメカニズム

過食の背景には、思い立ったらすぐに行動を起こしてしまう「性急自動衝動性」早く報酬を少なくても得たくなる「報酬感受性」の2つの因子がかかわっていると考えられています。過食の衝動を起こす「性急自動衝動性」は前頭葉や線条体回路と、反復した過食を促す「報酬感受性」は報酬系に含まれる線条体機能と関連していると考えられています。ストレスを感じると、前頭葉や脳幹部のノルアドレナリンが増加し、報酬系が刺激され過食の欲求が増す可能性があります。

「何かを食べないと落ち着かない」のはなぜ?

過食は、ストレスから「回避」するための対処行動として考えられています。 過食をしているときは、食べることに集中しており一時的にそのストレスから離れられますが、過食を止めるとストレスから「回避」することができなくなり、落ち着かなくなります。

参照

前頭前野・大脳辺縁系・大脳基底核による摂食調節機構

成清公弥, 粟生修司

九州工業大学大学院生命体工学研究科脳情報専攻

アディポサイエンス 6(3): 224-229, 2010.

前頭前野の機能が低下したり、ストレスによりセロトニンが足りない状態は甘いものやパン、お米などの炭水化物、あげものなどの脂肪分が多いものなど特定のものが食べたくなる、食べるなどの行動につながる可能性があります。

参照

肥満症治療のために-高次脳への配慮-

千葉政一, 坂田利家*

大分大学医学部第1内科, *中村学園大学大学院栄養科学部

The Lipid 15(3): 253-259, 2004.*

過食が続いてしまうと長期的な心身の不調につながります

過食を続けてしまうと、体重増加、唾液腺の肥大、誤嚥性肺炎、逆流性食道炎、虫歯などを発症するリスクもあります。

また、過食のストレスから摂食障害を発症し、無理やり食事をたくさん食べた後に吐き出すようになってしまう人もいます。