集中力・記憶力などのパフォーマンス低下は睡眠不足が原因?

[2021.09.14]

「心の不調」や「集中力の低下」、「パフォーマンスの低下」、「記憶力の低下」などにお悩みの患者さんの中には背景に「睡眠不足」がある可能性があります。
集中力、記憶力などのパフォーマンス低下が主なお悩みの方に生活習慣を詳しく尋ねると、その原因として睡眠リズムが乱れていることが考えられるケースが増えています。
 PC やスマホ、ゲームなどデジタル機器などいつのまにか睡 眠を妨げるものが生活の中にあり、さらにコロナ禍でテレワーク中心になり、仕事とプライベートの境目が見えなくなる。
通勤で歩いていた運動がなくなり、体を動かさなくなるなど生活習慣の変化がきっかけになり睡眠リズ ムの乱れが起きやすくなっています。

睡眠不足セルフチェックリスト

睡眠の不安は欧米では 3~5 人に 1 人、日本人では 5 人に 1 人いるといわれています。
最近体調が悪い、頭がすっきりしない、忘れっぽくなった…、集中力が続かない、など気になる症状はありませんか?

1.ベッドに入ってから30 分~1 時間以上寝付けない
2.睡眠の途中に何度も目が覚める
3.起きたい時間より早く目覚めて、その後寝付けない
4.眠りが浅く、睡眠時間のわりに熟睡した感じが得られない
5.集中力がない、忘れっぽい
6.疲れやすい、倦怠感が続く
7.日中、眠さにあらがえない
8.ストレスが溜まり、気分転換ができない
9.血圧が高い、頭痛がある
10.食べたい感じがしないのに食べたくなる。体重が増えた
11.イライラして怒りっぽい。

睡眠のリズムとは~ノンレム睡眠(深い睡眠)レム睡眠(浅い睡眠)~

睡眠は心身ともに疲労を回復させます。
特に脳は睡眠が唯一休むことができる時間です。
睡眠にはノンレム睡眠(深い睡眠)レム睡眠(浅い睡眠)のリズムがあります。
レム睡眠は「からだの眠り」と言われており、この時、脳はかなり活動していますが、体は 筋肉の緊張がゆるみ休んでいる状態といわれています。夢を見て覚えているのは、このレム 睡眠のときです。
ノンレム睡眠の時間は脳の発達に伴って増えてくるといわれ、子どものときに比べるとノ ンレム睡眠は多くなってきます。
成長に伴って脳を使うことが多くなり、脳も眠りが必要と なってくるためといわれています。 ノンレム睡眠は浅い睡眠から深い睡眠まで(S1→S2→S3→S4)と 4 段階に分かれます。
正常な人の睡眠では、ノンレム睡眠に始まり、S1→S2→S3 の順にもっとも深い睡眠(S4) まで、一気に達していきます。
このノンレム睡眠が 1 時間半~2 時間ほど続くと、一度睡眠 が浅くなり、今度は、最初のレム睡眠が現われてきます。
このノンレム睡眠とレム睡眠が 1つのセットになり、一晩に 4~5 回繰り返すのが睡眠の一般的なパターンとされています。

            ノンレム睡眠は浅い睡眠から深い睡眠まで(S1→S2→S3→S4)と 4段階に分かれます。


★ノンレム睡眠~脳のお掃除の時間~

ノンレム睡眠中は成長ホルモンが分泌され、成長や疲労回復、皮膚や細胞の修復を行って います。
「脳の老廃物の排泄プロセスにノンレム睡眠が最も効果的」であるということが ロチェスター大学メディカルセンターのマイケル・ネダーガー教授らにより2019 年にアメリカの科学学術技術誌「Science Advances」に「睡眠と脳の清掃機能」として発表しました。

グリンパテックシステムとは?

私たちの体には、細胞から排泄された老廃物を運び出して処理してくれるリンパ系が張り 巡らされています。
脳では、リンパ系に似た働きを持つ「グリンパテックシステ ム」という排泄機能があることがわかっています。
このグリンパテックシステムが活発に働くのはノンレム睡眠の時間帯です。
脳は毎日活動し続け、大量のエネルギーを消費して、蓄積しています。グリンパテックシステムはノンレム睡眠中に働き、その老廃物は翌朝尿として排泄されます。  寝つきが悪かったり、夜中に目が覚めてしまったりでノンレム睡眠に入れない状態が続く と老廃物が蓄積されてしまいます。
特にダメージを受けるのが大脳辺縁系にある海 馬と呼ばれる記憶の一時保管場所です。最近忘れっぽくなった、思い出せないなど認知機能 の低下につながります。
何日も眠れなかったり、睡眠不足が続くと段々考えがまとまらなく なったり、まったく仕事や勉強ができなくなってしまいます。
やる気や体力、思考能力が著しく低下してしまうのは、グリンパテックシステムが十分に働かず老廃物が蓄積され脳内 環境が乱れている状態となります。

アルツハイマー病とノンレム睡眠の関係

特にアルツハイマーなどの認知症の原因の一つと言われるアミロイドβというたんぱく質の老廃物の濃度が高いといわれていて、睡眠と老廃物除去の関連性が疑われています。

加齢とともに、ホルモンの分泌能力が衰えてノンレム睡眠が少なくなってしまうことは、すでに分かっているので睡眠の質を上げることが重要になってきます。

脳疲労の調整方法

睡眠不足で脳が疲労し、パフォーマンスが低下、集中力が低下、記憶力が低下している状態 は、脳のネットワークである DMN(デフォルトモードネットワーク)が過剰に反応し、CEN (セントラルエグゼクティブネットワーク)の活動が低下している状態なので、まずは脳の ネットワークを調整し、生活習慣を見直し脳内環境を整えることが必要です。