TMS治療

第2回臨床TMS研究会 2021年4月18日

【第2回臨床TMS研究会】

2021年4月18日に第2回臨床TMS研究会が行われました。

クリニックスタッフ一同参加致しました。

この研究会は
・TMS治療の情報共有・調整の場
・TMS患者のレジストリとデータベース化
・保険診療、もしくは保健医療に準じた治療を提供する医療機関について信頼できる情報をユーザーへ提供する
ことを目的に発足されています。

Agenda

(1) 開会のご挨拶:慶応義塾大学医学部精神・神経科学教室 教授 三村 將先生

(2)神奈川県立精神医療センター 実施状況:中村元昭先生

(3) 東京慈恵会医科大学 精神医学講座 実施状況:山崎 龍一先生 

(4)大阪医科薬科大学 実施状況:今津 伸一先生

(4)慶應義塾大学医学部精神科・神経科学教室 和田先生

(5)自由討論

登壇された先生方

・慶応義塾大学医学部精神・神経科学教室 教授 三村 將先生

・神奈川県立精神医療センター・昭和大学 准教授 中村 元昭先生

・東京慈恵会医科大学 精神医学講座 山崎 龍一先生

・大阪医科薬科大学 実施状況:今津 伸一先生

・慶應義塾大学医学部精神科・神経科学教室 和田 真考先生

・慶應義塾大学医学部精神科・神経科学教室 野田 賀大先生

(1) 開会のご挨拶:慶応義塾大学医学部精神・神経科学教室 教授 三村 將先生

第1回臨床TMS研究会が2019年10月20日に第1回臨床TMS研究会が行われ、その後コロナウイルスの影響などでなかなか開催ができず2021年4月18日に2回目の実施となりました。rTMS研究会は経験を積んだ医療機関、研究者、臨床家の意見交換会になります。日本ではまだTMS治療がうつ病治療として定着ができない現状にあることから、現在保険診療でTMS治療を実施している5施設から現状の状況と課題提案を行います。

【神奈川県立精神医療センター 実施状況】

中村元昭先生・吉田勝臣先生 伊津野 拓司先生

※詳しい情報に関しては研究途中の情報もあるため、具体的な検査の数値などについては割愛致します。

・日本ではなかなか保険診療と適正使用指針からTMS治療がまだ広がっているとはいえない

・東アジア人については、刺激の閾値が低く、TMS治療の痛みが強く感じやすい

・患者さんの印象としては痛みを我慢しながら治療を行っている印象がある

 だんだんと慣れてくるものの、痛くてつらいという患者さんも多い

・患者さんの中には座っているのが難しくて治療離脱になるケースもある

・治療の刺激調整の際にお薬のせいで反応がでなくてTMS治療が導入できない場合もある

・治療反応するのに十分な回数が保険診療ではできない可能性がある

【東京慈恵医科大学 慈恵 山崎 龍一先生 松田 勇紀先生 鬼頭 伸輔先生】

※詳しい情報に関しては研究途中の情報もあるため、具体的な検査の数値などについては割愛致します

・入院治療も外来治療も行っているが、コロナウイルスの影響から外来がストップになっており原則入院治療で行っている

・入院中についてはコロナウイルスの影響で外出ができない・長くて治療まで数ヶ月待つこともある

・TMS治療の効果が不十分の症例として PTSDを合併している症例や認知機能低下が目立った高齢の症例などを経験した

・保険診療のTMS治療は痛みが強く、患者さんが我慢しているケースも多く見られる

・緊張してTMS治療を実施する際には迷走神経反射が起きやすい人もいる

・同じ姿勢でいることで首が痛くなったりするケースもある

・先進医療制度を用いた双極性障害の抑うつエピソードに対する研究も慈恵医大・NCNP・慶応大学が行っている

【大阪医科薬科大学 実施状況:今津 伸一先生】

※詳しい情報に関しては研究途中の情報もあるため、具体的な検査の数値などについては割愛致します

・関西でrTMS治療のネットワークがありだんだんと臨床医の中ではTMS治療の適応・非適応例が浸透してきている

・コロナウイルスの影響で外出がなかなかできず、実際の日常生活の改善がわからないことが悩みである。

・TMS治療の刺激中に安心できるようにモニター等の工夫をしている

【慶應義塾大学医学部精神科・神経科学教室 和田 真考先生先生】

※詳しい情報に関しては研究途中の情報もあるため、具体的な検査の数値などについては割愛致します

・治療抵抗性うつ病に対する新規経頭蓋磁気刺激療法の開発と治療反応予測因子の同定として臨床研究も行っている

・治療抵抗例に限定した施行・治療プロトコールの比較・維持治療の開発・ナビゲーションによる治療の最適化・治療反応性の予測因子の探索

・高齢者は可塑性の関係上、反応が出るまでにタイムラグがあるかもしれない

当院では保険外診療によるTMS治療を行っています。

ご登壇頂いた一部の先生方には常日頃、TMS治療や研究方法についての指導やアドバイスを頂いております。
クリニックで適切なTMS治療をおこなうため、TMS治療の対象外となる方、地域の中核病院でのTMS治療のほうが適した方に関しては当院での治療ではなく、保険診療の医療機関にご紹介させていただいております。今後も日本のTMS治療を第一線で支える先生方にご指導いただきながら【日本における適切なTMS治療】を目指してまいります。

慢性疼痛~線維筋痛症~のTMS治療

[2020.11.07]

慢性疼痛とは

人間にとって「痛み」は危険信号としての役割があり、自分の身を守ってくれるものでした。

しかしながら、危険信号の役割を超えて長く続く「痛み」もあります。

このような「痛み」が続くと日常生活に支障をきたして生活の質が落ちてしまいます。

慢性疼痛とは、国際疼痛学会(IASP)で、「治療に要すると期待される時間の枠を超えて持続する痛み、あるいは、進行性の非がん性転移に基づく痛み」と定義されています。日本では明確な定義はありませんが、発症から3ヶ月を超えて症状が持続する病態とされることが多いです。

「慢性疼痛」の治療法
~新しい脳の治療法:TMS治療~

慢性疼痛に対する治療法は、薬物療法、神経ブロック、理学療法、カウンセリング、リラクセーション法、漢方・鍼灸等の治療法がありますが、近年では脳の磁気治療であるTMS治療が注目されています。

慢性疼痛は、日常生活が行える人も動かすごとに痛みを感じる人も、安静にしていても痛みを感じる人もいます。

そのような状態が続けば落ち込んだり、不安になったり、痛みにたいしてずっとぐるぐる思考が働いてしまったりと慢性疼痛に抑うつ状態が重なる人もいます。

近年ではTMS治療による「慢性疼痛に対するTMS治療」が世界でも注目されています。

慢性疼痛に対するTMS治療の機序

慢性疼痛のTMS治療の刺激部位は当院では大きく2つあります。(状態により更に細やかな調整を致します)

当院では、抑うつ状態、睡眠や食事、飲んでいる内服薬などの問診をベースに、痛みの位置と期間を含め刺激部位や刺激方法を調整致します。

脳の慢性疼痛に関わる前帯状回、背外側前頭前野、前頭葉眼窩面をTMS治療により調整することで、痛みに集中した治療、もしくは痛みに加えた抑うつ状態や不眠に対する治療が可能になります。

TMS治療の刺激により、視床の感覚中継核に作用し痛みの伝導を軽減するだけでなく、脊髄に刺激がゆき、交感神経遮断を行うなどの複合的メカニズムが想定されています。

参照

慢性疼痛に対する標準的刺激治療

齋藤 洋一 大阪大学大学院医学系研究科脳神経機能再生学

痛みの原因

慢性疼痛では痛みの原因や状態により、適切なアプローチが異なるため、まずはご自身の「痛み」について知ることが重要です。

痛みの原因による分類では、器質的な痛みを侵害受容性疼痛(切り傷や打撲痛)と神経障害性疼痛(坐骨神経痛・頚椎症)に分類し、それ以外の原因が見つからない痛みを機能性疼痛症候群、中枢性機能障害性疼痛などを含む「Nociplastic Pain」に分類しています。

「Nociplastic Pain」は、機能性身体症候群(Functional Somatic Syndrome:FSS)の概念に含まれるもので、過敏性腸症候群、慢性疲労症候群、線維筋痛症など原因を明らかにできない持続的で特異な身体愁訴を特徴とする症候群を指します。 

参照

痛みの情報サイト – 疼痛(とうつう).jp

侵害受容性疼痛

ケガや火傷をしたときの痛みです。

ケガの炎症により末梢神経にある「侵害受容器」という部分を刺激するため、「侵害受容性疼痛」と呼ばれます。

切り傷や火傷、打撲、骨折、関節リウマチや変形性関節症、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)などがあります。

原因のケガや病気が長引くと、慢性の痛みとなるものもあります。

神経障害性疼痛

何らかの原因により神経が障害され、それによって起こる痛みを「神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)」といいます。

坐骨神経痛、頚椎症、糖尿病の合併症に伴う神経障害疼痛などがあります。

40代以上に多く、日本では約600万人以上※の患者さんがいると推定されています。

神経障害性疼痛に対するTMS治療

神経障害性疼痛へのTMS治療が行われています

Nociplastic Pain:線維筋痛症

線維筋痛症(Fibromyalgia)は,Nociplastic PainのFSSの一つです。

3カ月以上持続する原因不明の全身痛を主症状とした,精神・自律神経系症状を伴う慢性疼痛疾患です。

中高年の女性に多く,日本では推定200万人以上の患者がいるとされています。

FSSの病態ははっきりとは解明されていませんが、脳内の神経伝達物質であり、不安や痛み、睡眠、食欲、呼吸など身体機能をつかさどるセロトニンとの関与が示唆されています。

線維筋痛症に対するTMS治療

TMS治療は線維筋痛症の痛み、倦怠感に効果があります。

Nociplastic Pain:線維筋痛症に対する日本のTMS治療

平成21年~23年の厚生労働科学研究補助金で行われた線維筋痛症の疼痛に対するTMS治療の研究では有意な痛みを軽減する効果を示し、問題となる有害事象はなかった

症例報告

49歳 男性 ステロイド治療後の慢性疼痛

TMS治療で慢性疼痛を改善したい

持病に対し、ステロイドの治療を行ったところ、1年前より筋肉が痩せ全身の身体の痛みを自覚し始めました。

身体全体の痛みにお悩みで、寝つきまで時間がかかり、睡眠薬を服用しているものの途中で目が覚めてしまい朝までぐっすり眠れない状態が続いていました。また、記憶力・思考力の低下を自覚されており、脳と身体をしっかり整えたいと希望され初診となりました。

初診時SDS 47点と軽度のうつ状態であり、TMS治療を1日2回、ほぼ毎日受けられたところ、3日目には背中の痛みをほとんど気にされなくなり、歩きにくさが改善されました。約1週間後のTMS治療開始10回目でSDS 35点となり、うつ状態が改善されました。TMS治療15回目には睡眠薬なしでもぐっすり眠れるようになり、TMS治療18回目には全体的に多少身体の痛みはあるものの耐えられないほどではなく、夜は深く眠れているようです。

眠れていることで気持ちが前向きになっているとお話しされていました。

37歳女性 線維筋痛症

痛みから解放され活発に動けるようになりたい

4年前の仕事と人間関係のストレスがきっかけとなり、後頭部から首、背中全体にしびれるような鈍痛があり

長時間座っていられず、また、痛みやしびれが出た後に吐き気がある、視界の色味が黄色っぽくなって文字が読めない、頭重感があるなどの不調で来院されました。

初診時SDS 58点とうつ状態であり、TMS治療を1日2回、週3-4回の頻度で開始しました。

TMS治療1回目から首のまわりが動くようになりました。TMS治療5回目でSDS 44点となり、うつ状態が改善されました。体の痛みもだいぶ軽減され、治療前は座っていると気持ち悪くなっていた状態が、1時間くらいは座って本が読めるようになりました。

TMS治療15回目には体が軽くなってきて、夜に少々痛みを感じるものの、日中は背中や目の痛みは気にならない程度まで改善されました。現在も順調に治療を継続中です。

料金

慢性疼痛 の TMS治療

慢性疼痛プロトコール 慢性疼痛TMS治療:9,900円/回(税込)

20回(セット)+10回(フォローアップ)

https://tms-clinic.jp/tms-therapy