「決断疲れ(decision fatigue)」とは、意思決定を繰り返すことによって、正確な決断が出来なくなる状態のことを言います。
決断疲れを防ぐため、スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグ、アインシュタインが毎日同じデザインの服を着ていたという話は有名です。
決断疲れを起こすと集中力、思考力が低下し、簡単なタスクにも時間がかかるようになります。
その結果睡眠時間が短くなり、さらにパフォーマンスが低下するという悪循環になることがあります。
特に経営者の方やマネージャークラスの方など、日々意思決定が求められる方に多く、業績の悪化などにもつながる問題となります。
今回は決断疲れの症状、起こさないための予防法、起きてしまった時の対処法について説明します。
いくつ当てはまる?決断疲れの症状チェックリスト
決断疲れの症状とは、以下のようなものです。
- 集中しようとしてもすぐに気が散ってしまう
- 理由はないのに焦りやイライラを感じることがある。
- なんとなく億劫でやる気が出ない
- 頭がぼーっとし、鉛が入って異様な状態になる
- タスクが残っているのに、気付いたら携帯を見てしまう
このような症状が特に夕方などに起きる場合、決断疲れが原因かもしれません。
「決断疲れ」の状態で意思決定をする危険性とは
人は1日で数千から数万回もの決断をしているといます。
決断をする回数が多いほど、また大きな決断をするほど負担が大きくなります。
大きな決断には、自分の将来について考えたり、何か高いものを買ったり、組織にとって重要なことを決めたりといったものがあります。
小さな決断には、どんな服をきていくか、ご飯は何を食べるか、SNSにいつ返信するか、といったものがあります。
決定疲れの状態では、冷静な判断ができなくなるため、本来は不要なものを買ってしまったり、感情に任せて判断をしてしまったりすることがあります。
自動車のディーラーは、何十種類もある色から車を選ばせることによって決断疲れをあえて起こさせ、車のオプションを選ぶ後半に高額なオプションを選びやすくすることがあるといいます。
また、スーパーのレジの目の前にはよく甘いお菓子がおいてあり、決断疲れを起こした脳には非常に誘惑的に映ります。
こういった状態で決断をしないためにも、重要な意思決定は決断疲れを起こしていない朝の時点で行う事が有効とされます。
もし夜に重要な商談などがある場合には、この後で説明するマインドフルネス瞑想や、TMS治療を行って脳をケアすることも可能です。
決断疲れの予防法は、決断の回数を減らす事
では、決断疲れが起きやすい経営者、その中でも優れた経営者達は普段どのようにしてパフォーマンスを維持しているのでしょうか。
決断疲れを避け、普段のパフォーマンスを維持するためには「決断の数を減らす」ことが重要です。
アップルの創始者であるスティーブ・ジョブズやFacebookの創始者のマーク・ザッカーバーグは毎日同じ色、デザインの服を着用していたと言われます。
他にも、以下のような方法で決断の回数を減らすことができます。
- 1日のはじめにスケジュールを立てておく
- 部屋の中に物を最小限にする(特に作業中に視界にはいる物を減らす)
- 毎日決まったタスクは出来るだけルーティン化する
- 食事は曜日ごとに決める、もしくは自動で郵送されるキット等を使用する
- 無意識に携帯でチャットツールを見ることを防ぐため通知をオフにする
- キッチンタイマーを利用し、音が鳴るまでは1つのことに集中出来る環境を作る(脳のマルチタスクを避ける)
- 意思決定の権限を出来る限り別の人に委任する
日々の決断を可能な限り減らし、重要な決断のみに集中できる状態をつくる環境・習慣をつくっていきましょう。
決断疲れした脳を回復させる対処法とは?
1.マインドフルネス瞑想
決断疲れした脳を回復させる方法として、もっとも有名なのがマインドフルネス瞑想です。
マインドフルネス瞑想は、ストレス緩和やパフォーマンス向上の目的でグーグルやフェイスブック、ゴールドマンサックス、アップルなどの企業で取り入れられています。
決断疲れを起こした状態の脳では、DMN(デフォルトモードネットワーク)という脳の回路が過剰に働いていると考えられます。
マインドフルネス瞑想を行うことによって、DMNの活性を抑え、頭をすっきりさせることが出来ます。
具体的には、呼吸に注意を向け続ける瞑想や、身体の感覚に意識を向ける瞑想などがあります。最近ではYoutubeなどの動画サイトでもやり方を解説されているので、参考にしてみてください。
2. TMS治療
TMS(Transcranial Magnetic Stimulation)治療とは、磁気を発生させる特殊な装置を用いて、脳を直接治療する方法です。
脳を直接ケアできる副作用の少ない治療法として、世界的に注目を集め始めており、日本では難治性うつ病に対して2019年に保険適応となりました。
DMNの活動を鎮められるという点でマインドフルネス瞑想とメカニズムは同じですが、より早くから効果を実感していただけることが多いのが特徴です。
当院で実際にTMS治療を行った方の例
上記のような方が、TMS治療を受けにいらっしゃいます。
当院では、これまでに3000例以上の日本人に対するTMS治療を行った上で、より治療効果を高めるための臨床プロトコルと臨床TMS治療機器を採用し、8割程度の方に改善効果を認めています。
当院では、「決断のスピードが戻ってきた」「疲労感が減った」「集中力が上がった」などと改善を自覚される方もいらっしゃいます。
①60代、男性 代表取締役 主訴:抑うつ・睡眠障害
毎朝かなりの落ち込みがあり、抗うつ薬などを試してみたものの、効果は感じなかったとのことでした。
睡眠の質も悪く日中眠くなっていたようですが、役職上多くの連絡が来るためカフェインなどをとりながらお仕事をされていました。
脳疲労を改善するTMS治療に興味を持って頂き、抑うつ状態と睡眠障害をターゲットにTMS治療を開始しました。
20回目終了時点では、早朝覚醒はあるものの、朝の絶望感がほとんど無くなったとのことでした。
薬では改善できなかったため、TMS治療は画期的だったとお話しされていました。
②30代、男性 代表取締役 主訴:気力低下・早朝覚醒
社員が増え、周りの目や自分自身のふるまいを気にするようになったりました。
仕事自体は好きなため強い負荷はないものの、朝起きるのが億劫になり、やる気が出なくなりました。日によって差があるためどうにかしたいと希望されて来院されました。
当院では、気力低下をターゲットにTMS治療を開始しました。
20回目終了時点では、10回目ではあまり効果を感じなかったが良くなってきている、イライラ感もなく寝つきもよくなったと効果を実感されていました。
最先端のTMS治療でストレスフリーに!
決断疲れを起こさない方法、決断疲れを起こした場合の対処法についてお話ししてきました。
TMS治療はまだ日本ではあまり知られていない治療ですが、適切な方法で使用すれば効果を実感していただく方も多い方法です。
もしTMS治療に興味をお持ちでしたら、お問合せフォームよりお問合せ下さいませ。
出典
Liston, Conor, et al.(2014) Default mode network mechanisms of transcranial magnetic stimulation in depression. Biological Psychiatry 76.7: 517-526.