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抗うつ薬・心のお薬の離脱症状
抗うつ薬・ベンゾジアゼピン系の 抗不安薬など心のお薬を減薬・中止(断薬)したときに、めまい、しびれ、シャンビリ、不安等が生じることがあります。
長く抗うつ薬を服用した後、抗うつ薬を中止した時に『中止後発現症状』、『中断症候群』がでることがあります。
抗うつ薬を開始した時に不眠や不安、焦燥感等がでるActivation Syndrome(賦活症候群)、発汗や震え、発熱、下痢等がでるセロトニン症候群と同様に抗うつ薬で出現する可能性があります。
抗うつ薬の『中止後発現症状』の症状
1か月以上 などある程度の期間、抗うつ薬を内服後に減薬したり服用を止めたりすると 『中止後症候群』 がでます。
- ふらつき・めまい・耳鳴り
- 頭痛・吐き気・気持ち悪さ
- 頭のモヤ(ブレインフォグ)思考力低下・集中力低下
- 不安・不眠・しびれ(シャンビリ)
などの症状が服用中止後おおよそ1-3日後に起こることが多いです。
減量後7日以内に症状が始まることがあります。
抗うつ薬を飲んで短期間でやめた場合は出ることは少ないです。
●どんな人が中断症候群になりやすいの?
中断症候群はお薬の種類、お薬の減薬の仕方、うつ状態のステータスにより起こりやすさが変わります。
一般的には
- 1か月などある程度の期間以上にSSRI・SNRIなどの抗うつ薬を継続していた
- 突然 抗うつ薬を減薬したいとお薬を一度にやめる
- 血中半減期が短いお薬
- (フルボキサミン:デプロメール・パロキセチン:パキシルなど)
- 5-HT再取り込み阻害作用が強力なお薬
- (パロキセチン:パキシルなど)
- ※ほかの抗うつ薬でも起こる可能性はあります
では中断症候群が起こることが多いとされています
中止後症候群の原因
シナプス間隙の5-HT濃度の急激な減少、 コリン神経系の過活動、 脳のセロトニン濃度が急激に減少することなどが関わるのではないかといわれていますが、中止後症候群の原因ははっきりとわかってはいません。
臨床では、中断症候群の方の診療をしていると
- お薬を飲んでいても調子が悪いことが多い
- 自律神経が乱れやすい生活をしている(夜更かし・お寝坊・ひきこもる)
のような方が中断症候群になることが多い印象があります。
お薬を飲んでやっと安定している状態では、お薬をやめると不安定になるというのはある意味明らかです。
しかしながらお薬を飲んでいてもよくならないときには、「お薬がどんどん増えてしまうかもしれない」、「お薬に依存してしまうのが怖い」という不安も大きくなりやすくもあります。
お薬に頼らない 中止後症候群のサポート TMS治療
うつ状態に対する治療法 には、以下のものがあります。
- 薬物治療:抗うつ薬などの治療
- 電気痙攣療法:人為的に頭部に電気を流して痙攣発作を誘発する ※重度のうつ病が適応になります
- TMS治療:頭部にコイルを当てて脳を磁気刺激する治療
- 精神療法:認知行動療法等のカウンセリング
副作用も少なく 安全性が高いTMS治療は「薬による治療が不安」、「薬 による治療でもなかなか改善しない」「早く治療効果を望みたい」という方におすすめです。
薬に頼らないうつ治療:TMS治療とは?
TMS治療は日本語では経頭蓋磁気刺激と呼ばれ、脳を直接刺激することによって脳の状態を改善します。
うつ状態の脳ネットワークでは、DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)が過剰な活動をしており、CEN(セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク)が活動低下している状態ともいえます。TMS治療は脳のネットワークを調整して治療します。
TMS治療は、磁気により身体を傷つけることなく脳細胞を刺激することで脳の治療ができる副作用の少ない新しい治療です。
元々、脳神経内科領域の検査やリハビリテーションの治療などにも使用されていた機器であり、2000年頃から急速に心の治療としてTMS治療の研究がすすみました。日本でも世界に10年遅れ、2019年6月にうつ病に対するTMS治療が保険診療化されました。海外では主流な治療の一つでもありますが、日本では保険診療化されたばかりの治療であり、TMS治療の経験がある日本の医療者は多くありません。
当院では、ハーバード大学TMSコースを修了した医師が、精神科教授、神経内科専門医、脳外科で脳波を専門としていた臨床工学技士と協同し、4000人以上の日本人に対する症例から、「日本人に合わせた世界標準のTMS治療」を行っています。
重症化すると長期にわたって薬物治療が必要になることもあり、重症化しない早めの段階でTMS治療を行うことを検討される方も多くいらっしゃいます。
TMS治療について、詳しくはこちらの記事を参照ください。
憂うつ気分とTMS治療の文献
お薬の治療では消化器症状や奇形、認知機能の低下、筋弛緩作用などの副作用、電気痙攣療法では、記憶障害などの認知機能障害が問題になりますが、TMS治療は軽い頭痛や軽い吐き気など副作用が少ないことが特徴です。
お薬よりも、副作用が少なく抗うつ効果が高い治療として世界ではTMS治療はうつ病の標準治療になっています。
安全、安心な治療がしたい女性 にも優しい治療です。
当院のTMS治療効果
どの病院もクリニックも同じTMS治療を行っているわけではありません。
TMS治療は海外に10年遅れて2019年6月に保険診療になったばかりでもあり、海外のTMS治療の知識と専門性をもつか、経験症例数や、プロトコール、日本全体の他医療機関との医療連携を実施しているかなど、TMS治療の専門性に大きく違いが存在します。
研究をもとにしたTMS治療の文献では、一般的にTMS治療は3-4割の効果が認められるとされています。
当院では、研究プロトコールではなく、より治療効果を高めるための臨床プロトコールと臨床TMS治療機器を採用し8-9割の効果をみとめています。
当院の心理検査改善割合
※うつ状態と集中力を評価する心理検査
TMS治療改善改善度
方法
※2020年5月~2021年1月までに当院へ来院し、TMS治療を実施した全患者
男性56%、女性44%
10代:3%,20代:25%,30代:25%,40代30%,50代:12%,60代5%
TMS治療初回時・10回目・20回目の心理検査結果の比較分析
「日本人に合わせた世界標準のTMS治療」を行うため日々データを積み重ね分析し治療を改善しています。
副作用が少なく依存性がないTMS治療にピッタリな人
- お薬に頼りたくない
- お薬を飲んでもなかなかうつ状態が改善しない
- シャンビリ感が強くソワソワしてしまう
- 抗うつ薬をやめてから不眠になった
- 副作用が少ない心身に優しい治療がしたい
- うつ状態を改善させながら無理なく減薬したい
安全に抗うつ薬をやめる方法
①抗うつ薬を減らす時はゆっくりと
最も重要なことは、抗うつ薬をゆっくりと減らしていくということです。時間をかけながら、1錠や半錠(場合によっては1/4錠やそれ以下)ずつ減らしていきましょう。
どれほどのペースで減らすかについては、ご自身の症状や治療経過との兼ね合いが重要であり、主治医の先生と相談しながら決めていくのが望ましいです。
抗うつ薬はSSRIでは、『パロキセチン:パキシル』・『フルボキサミン:ルボックス』・『セルトラリン:ジェイゾロフト』・『エスシタロプラム:レクサプロ』などがあります。SNRIでは『デュロキセチン:サインバルタ』『ベンラファキシン:イフェクサー』などがあります。
②抗うつ薬以外の神経伝達物質を整える治療を組み合わせる
『中止後発現症状』が起きる原因は、 セロトニンなど抗うつ効果のある物質量が急に変化することだと考えられています。
セロトニンは抗うつ薬だけでなく、薬に頼らない磁気治療でも調整されます。
当院ではセロトニンの急激な変化を予防するため、減薬前にTMS治療を導入し『中止後発現症状』が起きないように減薬の準備をサポートしています。
③処方してくれた医師の指示の元、減薬をする
どのお薬から、どのくらいのペースで中止をしていくかについては、処方をした順番や飲み始めた時にでた症状などが参考になることもあります。
抗うつ薬を処方をしてくれた医師の指示の元、減薬をすることをおすすめします。
場合によっては、半減期の長い薬剤へ切り替えての減薬をすることもあります。
当院では、主治医の先生と併診するTMS治療が可能です。お気軽にご相談ください。
★中止後症候群か、うつ病の再発かの見分け方
お薬を中断して症状が出た後、飲んでいたお薬を飲むと見分けることができます。
中止後症候群では、中断したお薬を飲むと24時間以内に症状が改善します。
一方、抗うつ薬の再燃では24時間を超えても改善が見られず症状が長く持続します。
『 中止後症候群 』・ 『中断症候群』 はなぜ『離脱症状・離脱症候群』といわないの?
中止後症候群・中断症候群に対し、『離脱症候群』という用語が使用されることがありますが、これは厳密にいえば間違いです。
『離脱』という用語には『依存』が関わります。
抗うつ薬の場合は、内服を中止した後には抗うつ薬への強い欲求や自己制御ができなくなり、生活に影響をきたす依存行動がみられないため、中止後症候群・中断症候群は『離脱症候群』とは言いません。
まとめ
抗うつ薬は治療に役立つ一方、はじめるとき、やめるときのハードルもあります。
『いまの治療でなかなか調子が改善しない…』、『減薬の背中のあと一押しがほしい』というあなたにTMS治療がサポートになるかもしれません。
あなたのお薬に頼りたくない、減薬したい気持ちを応援しています。
まずはお気軽にご相談ください。