薬に頼らないスマホ依存・ゲーム依存の脳疲労治療 TMS治療

[2020.11.07]

スマホ依存・ゲーム依存とは?

インターネットやゲームを「好きでやる」ことと「依存する」ことは違います。

コロナ禍では、自粛生活からスマホや・ゲームに接する時間が増えやすくスマホ依存やゲーム依存の人が多くなっています。最近ではユーチューブ依存(youtube依存)のような動画を延々と見てしまう人も多くなっています。

「スマホやPCを触っていない時間があるとそわそわしてしまう」、「無意識にいつのまにか携帯をさわってしまう」、「ネットやゲーム、スマホについて注意されるとイライラしてしまう」ような状態になると、スマホ依存、ゲーム依存のイエローカードです。

 スマホ依存・ゲーム依存チェック

スマホ依存、ゲーム依存はどこからが依存症になるのかが判断が難しいです。

自分で判断する目安としては「利用をした時間を後悔する」状態はコントロールができていない状態といえます。

  • 夢中になってご飯を食べ忘れたり、眠りにつけなくなる
  • やめようと思ってもいつのまにかさわってしまう
  • 利用時間や課金状態を周りの人に話すことにためらいを感じる
  • 仕事上のミスが増えた
  • 家族関係や友人の関係など人間関係が悪化した

スマホ依存・ゲーム依存はなぜおこる?

スマホ依存・ゲーム依存などでは前頭前野の機能低下により衝動や感情などのコントロールが難しく依存が形成されます。

依存症になる原理はアルコールやギャンブルの依存と同じです。スマホやゲームなどの刺激があると脳内にドーパミンのホルモンが分泌され、依存が形成されます。

ドーパミンはやるきスイッチのようなものです。前向きに行動しづらくなるようなストレスを感じると、ストレスがあってもドーパミンを出して頑張って動こうとドーパミンが出ます。

しかしながら、スマホ依存やゲーム依存などは、ドーパミンの分泌を外部の刺激に頼り続ける状態です。いざストレスを感じた時、内部からドーパミンが十分に分泌されずイライラして、やる気が出ない、うつ状態になりやすい状態といえます。

もなりやすくなります。

スマホ依存・ゲーム依存存は大脳基底核の「報酬系」の反応の欠乏により、スマホ・ゲームから離れるとイライラしてしまう状態になります。

脳内報酬系を中心とした脳の各部位における形態的・機能的障害が報告されおり、感情のコントロールを行う背外側前頭前野と線条体の機能的結合が減弱していることが知られています。

スマホ依存の影響~二次障害~

インターネット・ゲーム障害の二次障害として、うつ病、睡眠障害のような状態になったり、栄養状態の悪化、人間関係の悪化などがおこりやすく心身に影響がでます。

スマホ依存・ゲーム依存二次障害チェック

  • イライラしやすくなった
  • 寝つきが悪くなった
  • ゲームやスマホはできるが、起き上がるのが億劫になった
  • 腰痛がひどくなった
  • 睡眠のリズムが崩れ昼夜逆転した

スマホ依存やゲーム依存の要因

スマホ依存・ゲーム依存になる要因は1つではありません。社会的に閉じこもりたくなるような状態や精神の病気、小さいころからのインターネットの頻回な使用など、いくつもの要因が重なっています。スマホ依存・ゲーム依存には「促進要因」と「抑制要因」がいくつもあり、バランスが重要です。促進要因をたくさん持っていたとしても、抑制要因の一つが十分に重かったり、抑制要因の方が多く持っていればゲーム障害に陥らずにすむかもしれません。

参照

ネット依存・ゲーム依存がよくわかる本  樋口 進

医学のあゆみ ゲーム依存 271巻6号 

【脳の磁気治療:TMS治療とは】

TMS治療は日本語では経頭蓋磁気刺激と呼ばれます。

TMS治療は磁気を使って脳を直接刺激し、身体を傷つけることなく脳をケアすることができる副作用が少ない治療法であり、日本でも主に精神科領域やリハビリ領域で注目されつつあります。

脳血流や脳ネットワークのバランスを整え、前頭葉の機能向上ならびに偏桃体の過活動を抑制する、神経可塑性を調整するなどのメカニズムによって治療効果があると考えられています。

依存症の脳ネットワークでは、DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)が過剰な活動をしており、CEN(セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク)が活動低下している状態ともいえます。TMS治療は脳のネットワークを調整して治療します。

TMS治療は、磁気により身体を傷つけることなく脳細胞を刺激することで脳の治療ができる副作用の少ない新しい治療です。

元々、脳神経内科領域の検査やリハビリテーションの治療などにも使用されていた機器であり、2000年頃から急速に心の治療としてTMS治療の研究がすすみました。日本でも世界に10年遅れ、2019年6月にうつ病に対するTMS治療が保険診療化されました。海外では主流な治療の一つでもありますが、日本では保険診療化されたばかりの治療であり、TMS治療の経験がある日本の医療者は多くありません

当院では、精神科教授、神経内科専門医、脳外科で脳波を専門としていた臨床工学技士と協同し、4000人以上の日本人に対する症例から、「日本人に合わせた世界標準のTMS治療」を行っています。

重症化すると長期にわたって薬物治療が必要になることもあり、重症化しない早めの段階でTMS治療を行うことを検討される方も多くいらっしゃいます。

TMS治療について、詳しくはこちらの記事を参照ください。

薬に頼らないスマホ依存・ゲーム依存の治療~TMS治療~

TMS治療でスマホ依存・ゲーム依存の原因となる前頭前野を刺激し、スマホやゲームから離れるとソワソワしてイライラしてしまうという渇望状態を抑制することが可能です。

スマホ依存・ゲーム依存の二次障害である、落ち込みややる気の低下、睡眠障害などもTMS治療により、薬に頼らない治療が可能です。

スマホ依存・ゲーム依存の症例

24歳 男性 スマホ依存・PC依存・youtube依存

スマホやPCでユーチューブ(youtube)をみてしまい卒論がすすまない

コロナ禍で大学がオンライン授業となり、だんだんと引きこもりがちな生活になってきた。スマホyoutubeをみるようになりいつのまにか半日も時間がたったり、寝つきが悪くなり昼夜逆転するようになった。
自分の中では、ただスマホをみている、楽しんでいるだけだとおもっていたが、だんだんと学校の約束の時間や友人との時間を忘れyoutubeから離れられない状態になっていた。

卒論を書くためにPCを用いた際もyoutubeをみてしまうようになり、卒論の仮提出の際に提出ができなかったことをきっかけに自分で自分の状態がおかしな状態と自覚し、当院へ受診をした。

当院来院時には集中力低下の心理検査が14点であり、お父様と来院された。当日よりTMS治療を開始し、TMS治療10回目の時には集中力の心理検査は4点まで改善を認めていた。

それまでは、日常の小さなことでもイライラしやすかったり、イライラするとyoutubeをみたい渇望感がでてきていたが、治療がすすんでいくにつれて、イライラはしなくなってきており、だんだんと落ち着いて物事に取り組めるようになっていった。

TMS治療20回目の時には、今までネットをみると、すぐに他の面白そうな情報をクリックしてしまっていたのが、必要な情報はなにかを考えながら調べることができるようになり、時間が半分以下になったと喜ばれていた。

お父様も治療が進むにつれて家でも集中をして勉強や家事に取り組む姿が見られるようになってきたと喜ばれていた。

38歳 女性 スマホ依存・カフェイン依存

3つの会社の仕事の通知でスマホをみないとソワソワする

社外取締役など、3社の会社の仕事をしており朝から晩まで常にスマホ通知が来る状態になっていた。

仕事ができていた時は膨大な量の情報の処理もできていただものの、だんだんと夜眠る直前までスマホやPCと共に生活をする状態になり寝つきが悪くなって、朝起きるのが億劫になってきた。

そのような状態が3ヶ月続いた後、意思決定力が著しく落ち、自分の脳のパフォーマンスが低下していることを自覚し、当院受診となった。

当院初診時集中力低下の心理検査が16であり、通知がならないとソワソワするじょうたいになり、周りの社員にもきつく当たるようになっていた。

TMS治療10回目の時には集中力低下の心理検査は6まで改善しており、治療終了後に頭がすっきりする、自然な眠気が夜でるようになり、スマホの通知がしなくてもおちついて目の前の仕事に向かえるようになったと喜ばれていた。

20回目の時には集中力の心理検査は4まで改善し、一度仕事を整理して本当に自分がやりたい仕事にフォーカスするとすっきりした顔をされていました。

 自分でできるスマホ依存・ゲーム依存の予防対策

  • スマホを別の場所に置いてみる
  • ネット以外の趣味やストレス解消法をもつ
  • 筋トレなど「成長を実感できる」運動をする
  • 家族など一目のある部屋でパソコンやスマホを使うようにする