「受験うつ」~症状とTMS治療の効果について~

高校3年生、浪人生の受験シーズン、大学生の就職試験、国家試験など「勉強・受験ストレス」によるこころの不調。

最も多いのは「集中力がでない」ことに対するご相談です。

頑張って勉強しているにも関わらず、朝起きるとだるくて頭が働かない、勉強中も頭がぼーっとしてしまう。

真面目な人ほど、勉強に集中したいのに集中できない状態をストレスに感じ、疲れてしまうことがあります。

このような症状のある場合は受験うつかもしれません。

「やる気が起こらない、億劫な感じ、イライラする、気分が落ち込んでいる、不安を強く感じる、些細なことが気になる」といった精神的な面の他に、

「よく眠れない、寝ても疲れが取れない、体や脳が重たい」といった身体的な悩みを同時に抱えることもあります。

これらはただ「集中できない」状態ではなく、抑うつ症状である可能性があります。

受験うつの症状チェックリスト

受験うつになっていないか、チェックをしてみましょう。

日本において、「うつ病」は大人の心の病気のイメージがあるかもしれませんが、近年では「若い人でもうつ病になる」ということが精神分野、教育分野など社会へだんだんと浸透してきています。

また、今まで勉強を頑張って頑張ってきた人が、ある日突然プツッと切れたように燃え尽きてしまう、

試験後や入学後にやる気が出ないなどの状態も、「燃え尽き症候群」として、うつ状態の可能性があります。

受験うつの特徴と診断

大人のうつ病では、抑うつ気分、思考や判断力などの精神活動の低下、意欲の減退や会話の減少、動作や反応が遅くなる、不眠などの症状が代表的です。

若い人のうつは、怒りや悲しみなどの情動反応が大きくなり、落ち込みよりもイライラや焦りなどが目立つことが多いです。

  • 集中したくても椅子に座るのが億劫
  • 同じことを何度もぐるぐる考えてしまう
  • 受験の日のことが不安で集中ができない
  • 何をしようと思ってもやる気がでない、朝起きれない
  • 勉強をする意味がよくわからなくなってしまった

しかしながら、勉強のストレスや未来への不安など過度に脳を使うような状態は脳が疲労します。

前頭葉皮質の抑制が弱まってしまい、不安・恐怖の神経回路が過剰活動した結果、イライラしやすくなると考えられます。

受験勉強に伴い上記のような症状が起きている場合、受験うつの可能性があります。

しかし受験うつは一般的な概念であり病名ではないため、うつ病のように「診断」はできません。

仮に診断するとすれば、受験をきっかけとした「うつ病」もしくは受験に伴う「適応障害」という診断名になると考えられます。

良いストレスと悪いストレス

受験うつは受験ストレスによって引き起こされますが、ストレス自体が脳に悪いというわけではありません。

よくストレスは悪者になりがちですが、一定のストレスがあった方がパフォーマンスが上がると考えられています。

ここでは緊張とパフォーマンスの効果について「ヤーキーズ・ドットソンの法則」を紹介します。

ヤーキーズ・ドットソンの法則とは、ネズミを用いた実験で、「動機づけには、罰やストレスなどの不快なものが一定量あったほうが、効率が上昇する」ということが判明した有名な実験です。

上記のグラフに示す通り、適度な緊張状態(いいストレス状態、丁度良い課題を課されている状態)の時に最適なパフォーマンスを発揮することが示唆されました。

だからこそストレスそのものを悪者ととらえるのではなく、ストレスと上手に付き合っていくことで受験や私生活等のパフォーマンス向上につながります。

とはいえ、脳機能が低下しており集中力が低下している状態では、ストレスと上手く付き合うことが難しいことも多くあります。

このようなときには、まずはTMS治療で脳機能を上げてから、場合によっては受験で辛いことを相談でき、自分が勉強する意味を考え直すカウンセリングを併用することがおすすめです。

TMS治療~受験うつへの磁気刺激療法~

TMS(Transcranial Magnetic Stimulation:経頭蓋磁気刺激法)治療は、うつに大きく関わる背外側前頭前野を含む前頭葉を「磁気刺激」によりケアする治療法です。

磁気により身体を傷つけることなく脳細胞を刺激することで脳の治療ができる副作用の少ない新しい治療です。

メカニズムについては日々研究が行われていますが、集中力や思考力を担うネットワークを調整することによって治療効果があると考えられています。

( TMS治療の詳細については、詳しくはこちらをご覧ください)

さらにTMS治療では、高齢者よりも若年者に対して短期記憶を司るワーキングメモリを改善する効果が出やすいことがわかっています。

以上から、受験うつに対する薬に頼らない治療として、TMS治療は近年注目されています。

当院での受験うつに対する治療効果

どの病院もクリニックも同じTMS治療を行っているわけではありません。

TMS治療は海外に10年遅れて2019年6月に保険診療になったばかりでもあり、海外のTMS治療の知識と専門性をもつか、経験症例数や、プロトコール、日本全体の他医療機関との医療連携を実施しているかなど、TMS治療の専門性に大きく違いが存在します。

※当院では、うつ病治療のガイドライン や米国精神医学会(American Psychiatric Association APA)による
うつ病の評価尺度(DSM-52)を用いて心理検査を実施しており、各項目の合計値を平均し算出したグラフです。
重度(16pt以上):日常生活に支障を示す状態、中等度(8pt以上):このまま続くと辛い状態

当院で「受験うつ」にお悩みで受診された方に対するTMS治療の結果を上に示します。

一般に、TMS治療は20回〜30回が必要とされていますが、受験うつに悩む方の場合、10回時点で改善を自覚することが多くあります。

これには、TMS治療による改善度合いが高いとされる若年の方が多いことが一因として考えられます。

10回時点で大きく改善した場合にも、状態の維持のためにはメンテナンス治療を含めて20回〜30回行うことが望ましいとされています。

当院の受験うつに対する症例

10代 男性 主訴:大学受験浪人期の抑うつ症状

高校3年時より、急に朝起きれなくなり学校の遅刻・欠席が頻発。そこから勉強に集中できなくなり模試でいままでA判定だった大学にも不合格になりました。

予備校に通い次の大学受験に向けて頑張りたい気持ちはあるが、気分の落ち込みや不安、集中力低下により通えていない状態でした。

そこで、不安や抑うつ状態をターゲットとしてじっくりTMS治療を開始しました。

20回目終了後、「焦りや不安などの感情も減ってきて朝起きられるようになった」そのことにより「勉強に集中できるようになり行動意欲が湧いてきた」とお話されていました。

10代 女性 主訴:受験に対する抑うつ状態、無気力、過眠

高校3年生。部活に打ち込み勉強のことをあまり考えていませんでしたが、部活引退後大学受験について考え、勉強をする時間が増えるにつれて不安が強くなりました。

そこで無気力な状態や過眠傾向が続き当院を受診されました。無気力をターゲットとしてベーシックTMS治療を開始しました。

20回目終了後、「頭のモヤモヤしていたものが晴れてスッキリした、少しずつ気力が湧いてきた」とお話されていました。

料金

当院では大きく2つの治療コースを用意しております。

それぞれの状態に合わせたコースを提案させていただきますので、初診時に医師の診察にてご相談くださいませ。

受験うつに対する投薬治療

「できるかぎり結果を出したいからこそ副作用はコントロールしたい」

精神安定薬は脳の活動を抑えることで不安やイライラなどを緩和しますが、同時に記憶力などの脳機能も低下してしまうこともあります。

ただ落ち込みを改善すれば良いだけでなく、試験で高いパフォーマンスを出したい受験うつの場合には、注意して内服薬は主治医の先生と相談することが望ましいと考えられます。

抗うつの安全性

若年生のうつに対しては、薬物療法において、抗うつ薬のうち一部のSSRIにのみ限定的かつ低い有効性のエビデンスがある一方、

有害性については自殺関連事象や【賦活化症候群:アクチベーションシンドローム】などが新規抗うつ薬で起こるリスクが知られています。

特に若い人ほど、アクチベーションシンドロームがおこりやすく、中枢神経刺激症状が出現することがあります。

また、抗うつ薬の中でもデュロキセチン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシンに関してはプラセボ群に比べて攻撃性が高まることも報告されています。

抗うつ薬を用いるときは、若年の方やその親御さんは安全性・有効性を理解できるよう説明を受けたうえで使用されると良いでしょう。

TMS治療には「御本人の意思」が重要

受験生の方の中には、親御さんの希望で無理に医療機関へ連れてこられる方もいらっしゃいます。

TMS治療は20回〜30回と高い治療頻度が必要な治療です。継続的な通院のためには、ご本人の意思が重要です。

親御さんの心配する気持ちも十分に理解できますし、費用を負担いただくのも親御さんである場合が多くあります。

一方で、治療を受ける、勉強する、受験をする主体はご本人であり、この先の人生を主体的に歩むためにも、当クリニックではご本人のご希望を尊重しております。

当クリニックでTMS治療が行えるかの判断をする際には、ご本人に治療意思があるかどうかも重視していることを、ご理解いただけますと幸いです。

自殺のリスク

一般的には思春期以前の自殺はまれであり、思春期以降に増加するとされています。

思春期以降では自殺の完遂は男性に多く、自殺企図は女性に多いとされています。

子供の自殺の80~90%に気分障害などの精神疾患が関与しており、重症度も関連していることから、通院が困難であったり、病状が重度であったりする場合は当院での治療を中断し適切な医療機関へのご紹介も行っております。

子供の主な相談窓口

最後に〜受験生の方へ〜

今、勉強に行き詰まっている、人生に行き詰っている場合は「受験や勉強の結果、なにがしたいか」、目標を1度立ち止まって考え、再確認してみるのも一つです。

これから何をしたいか、するべきかを確認することは現実逃避ではなく、むしろこれからの時間を目的に定めることができ、着実に実行ができることにつながります。

自分が受験をする理由、例えば
・エンジニアになりたいから理工学を学ぶためにこの大学へ行きたい。
・将来は医師になりたいから医学部のある大学へ進学したい。

など、なぜ自分が”今”勉強をしているのかを確認することは自分のモチベーションを維持するのに有効です。

受験での成功や失敗は、受験だけでなく将来自分が自立していくために貴重な経験になります。

例えば周囲からの期待やプレッシャーはこれから社会人として仕事をする上で同様なことが必ずあります。

そんな時、一息ついて過去の自分はどうやって乗り切ったのか、同じ失敗をしないために次は別の方法を模索する等、将来に役立つことは多いのです。

未来のための実行が、抑うつ気分や眠れない、不安によって邪魔されており、それを改善することで勉強に集中したいと望まれる方は、是非1度ご相談ください。

最後に〜ご家族の方へ〜

一番近くで頑張っている本人を見ているご家族にとっては、勉強に集中できず辛そうにしている姿を見ることは何より心配だと思います。

一方で、ご家族の方による「勉強大丈夫?」「絶対合格するよ」という声は時に負担になることもあります。

本人は本人なりに、勉強にひたむきに取り組んでいることかと思います。一番近くにいる存在として、勉強からホッとする居場所として、本人の意思を尊重し、引き続き暖かいサポートをしてあげてください。

受験うつにお困りの方は初診お問い合わせを

このように、TMS治療は受験うつの治療の良い選択肢になるのではないでしょうか。

「お薬でなかなかよくならない」「お薬の副作用が不安」「減薬したい」方にTMS治療を提供します。

当院では、現時点で日本人に対する3000症例以上のTMS治療の経験があり、ハーバード大学TMSコースを修了した医師と大学の精神科教授、脳外科経験を生かした臨床工学技士チームで、専門的な「日本人に合わせたTMS治療」 を提供しています。

また、TMS治療は最初の通院頻度は比較的高いので、通院のしやすさも重要となってきます。

土日祝日も開院しており、学校やお仕事がお休みしにくい方や遠方の方でも短期集中でTMS治療が可能です。

もしTMS治療に興味をお持ちでしたら、お問合せフォームよりお問合せ下さいませ。

女性メンタル産業医として田中医師が特集されました

医歯専門予備校 メルリックス学院さんの産業医として、田中奏多医師が活躍しています。

渋谷の医学部専門受験予備校であるメルリックスでは、女性の産業医と提携し、体の不調はもちろん、不眠や食欲不振などのメンタルケア、生理痛、生理前の不調など女性特有の相談に乗っています。

医師国家試験対策予備校 TECOMさんで田中 奏多院長が講演会を行いました

医学生向けの医師国家試験予備校であるTECOMで今後医師になる医学生に向けて田中医師が講演会を行いました。