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パーキンソン病のメンタル不調とは
身体の動きが悪くなってきた、筋肉がこわばるような感じ、ふるえる、転びやすくなった・・・など、パーキンソン病では主に運動症状や便秘や嗅覚の変化などの体の症状が注目されることが多いです。
しかしながら、ドーパミンが関わるアンヘドニア(無快楽症)や、アパシーに悩んだり、元々真面目な人がなりやすいパーキンソン病では、自分を責めたり、睡眠の質が落ちたり、不安が強くなりやすい心の症状も認められます。
パーキンソン病のメンタルセルフチェックリスト
- □自分を責めて自己嫌悪する
- □何をしても楽しくない
- □感情が感じられない
- □やるべきことがあってもやる気がでず億劫になっている
- □よく眠れない
- □必要以上の不眠に悩む
パーキンソン病にうつ状態はおこりやすい?
メンタル不調を起こしているときには、パーキンソン病の治療とうつ状態の治療は同時に行うことがおすすめです。
パーキンソン病の方がうつ状態になるときには以下のようなケースがみられます
診断を受けたとき
パーキンソン病は発症から5年程度はお薬の治療によりほとんど症状がないレベルに改善できることが多いです。しかしながら、うつ状態やお薬への不安が強いことから、客観的に自分の状態を受け入れられないこともあります。
冷静に判断できず、診断や適切な治療を納得して受けられないために、お薬を飲まずにパーキンソン症状が悪化してしまう。
パーキンソン症状が悪化すると外に出たくなくなり寝てばかりになってしまったり、パーキンソン病の症状が悪化することでうつ状態が悪化するという、悪循環になってしまうこともあります。
うつによるパーキンソン症状
パーキンソン病のパーキンソン症状だけでなく、うつ状態でもふるえや、すくみ足などのパーキンソン様症状が認められることがあります。人間の体は元々一つであり、特に脳の病気であるパーキンソン病はうつ状態の脳の状態と相互に影響をします。
パーキンソン病が悪化したと感じ、更に不安が募り、うつ状態の悪循環が生まれてしまいます。
ウェアリング・オフ現象(Wearing Off現象)とうつ状態
パーキンソン病の進行で、L-dopa効果時間が短くなりウェアリング・オフが認められるときには、オフの症状として鬱や不安を感じることが多いです。また、オンのときにも、オフになってしまわないかという予期不安が強く、日常生活をすごすのが一苦労になることもあります。
ギャンブル・ゲーム・スマホ・買い物・性欲などへの依存
特に若年のパーキンソン病の方にギャンブル、買い物、性欲、スマートフォンなどの行為への依存しやすさが心配されています。
一時的に体が楽になるということからドーパミンがでるような依存しやすい行為へハマってしまうことがいわれています。
このような場合、オフを予防したい、その行為が好きで行いたくてしかたかがないというよりもどちらかといえば、周りの人との関係だったり、体が動か無いことから夢から離れたりと、つらい現実から離れたいといううつ状態も関わっている可能性もあります。
パーキンソン病に対するTMS治療メリット
※パーキンソン病のTMS治療とうつ病のTMS治療は刺激方法が異なります
- お薬に頼らず、効果的で副作用の少ない治療ができる
- 集中力や思考力などの上位のネットワークを調整できる
- 心の効果だけでなく、運動の効果も得られる可能性がある
- 依存のコントロールがしやすくなる
1)お薬に頼らず、効果的で副作用の少ない治療ができる
TMS治療は磁気による脳の治療です。お薬よりも抗うつ効果があり、吐気やフラつき、ふるえなどの錐体外路障害の副作用がおきづらい、新しい治療として注目されています。
2)集中力や思考力などの上位のネットワークを調整できる
お薬では、食欲や悲しみなどの生物学的なネットワークである下位のネットワークにアクセスできる一方、集中力や思考力などの上位のネットワークはなかなかアクセスできないことが課題にあります。しかしながら、TMS治療の場合は脳の細胞を刺激することで集中力や思考力の上位のネットワークの調整ができるのです。
3)心の効果だけでなく、運動の効果が得られる可能性がある
TMS治療は元々は神経内科領域の医療機器です。うつ病の刺激法と異なる刺激法ですが、ドーパミンを調整し運動機能を改善するような刺激法のTMS治療も研究されています
4)依存のコントロールがしやすくなる
TMS治療は依存行動をしていないときのイライラを抑制することができ、依存のコントロールがしやすくなります。
パーキンソン病ではドーパミンがでるようなギャンブルや買い物、性欲、スマートフォンなどの行動にそのときは体が楽になることもあり、依存が形成されやすい状態になります。
依存が形成されると、それをしていないときにイライラしやすくなる、そわそわしてしまうなどの状態がおこり、それがさらに依存を繰り返してしまう原因になるとされています。
薬に頼らない心の磁気治療 TMS治療
うつ状態に対する治療法
- 薬物治療:抗うつ薬などの治療
- 電気痙攣療法:人為的に頭部に電気を流して痙攣発作を誘発する ※重度のうつ病が適応になります
- TMS治療:頭部にコイルを当てて脳を磁気刺激する治療
- 精神療法:認知行動療法等のカウンセリング
副作用も少なく 安全性が高いTMS治療は
「薬による治療が不安」、「薬 による治療でもなかなか改善しない」「早く治療効果を望みたい」
という方におすすめです。
憂うつ気分とTMS治療の文献
お薬の治療では消化器症状や奇形、認知機能の低下、筋弛緩作用などの副作用、電気痙攣療法では、記憶障害などの認知機能障害が問題になりますが、TMS治療は軽い頭痛や軽い吐き気など副作用が少ないことが特徴です。
お薬よりも、副作用が少なく抗うつ効果が高い治療として世界ではTMS治療はうつ病の標準治療になっています。
安全、安心な治療がしたい方にも優しい治療です。
当院のTMS治療効果
どの病院もクリニックも同じTMS治療を行っているわけではありません。
TMS治療は海外に10年遅れて2019年6月に保険診療になったばかりでもあり、海外のTMS治療の知識と専門性をもつか、経験症例数や、プロトコール、日本全体の他医療機関との医療連携を実施しているかなど、TMS治療の専門性に大きく違いが存在します。
研究をもとにしたTMS治療の文献では、一般的にTMS治療は3-4割の効果が認められるとされています。
当院では、研究プロトコールではなく、より治療効果を高めるための臨床プロトコールと臨床TMS治療機器を採用し8-9割の効果をみとめています。
当院の心理検査改善割合
※うつ状態と集中力を評価する心理検査
当院の重症度別 TMS治療改善改善度
方法
※2020年5月~2021年1月までに当院へ来院し、TMS治療を実施した全患者
男性56%、女性44%
10代:3%,20代:25%,30代:25%,40代30%,50代:12%,60代5%
TMS治療初回時・10回目・20回目の心理検査結果の比較分析
「日本人に合わせた世界標準のTMS治療」を行うため日々データを積み重ね分析し治療を改善しています。
よくある質問
パーキンソン病のうつ状態の原因とは?
パーキンソン病のうつ状態の原因は3つ主に考えられます。
- パーキンソン病の進行に伴い、日常生活に影響が出ることに悩んでしまう
反応性にうつ状態になっている場合には、診断を受けた時、病状が進行をしたときの二峰性にうつ状態が悪くなります。パーキンソン病の進行で、L-dopa効果時間が短くなり(ウェアリング・オフ)1日のうちで薬の効くとき(オン)と効かないとき(オフ)がみられるようになるときに不安のほうが強い落ち込みを感じることが多いです。
- パーキンソン病の精神症状の一つとしてうつ状態になる
パーキンソン病の精神症状として「意欲の低下や行動、認知、感情のやる気」に関わるアパシーやアンヘドニア(無快楽症:喜びを感じることができない状態)となり、うつ状態になることがあります。アンヘドニアはドーパミンが関わることが明らかになっており、
- うつ病とパーキンソン病の2つ同時に発症している
過去にうつ病と診断されたことが会ったり、おちこみやすい性質があった
パーキンソン病のうつ症状とうつ病の違い
パーキンソン病のうつ症状の場合、自殺念慮や妄想、朝の強い落ち込みなどの1日の変化がないことがうつ病との違いと言われることが多いです。ただ、「興味や喜びの減退」というドーパミンが関与する症状が出ることが多く、とくに強い不安を伴う落ち込みを感じることが多いとされています。
TMS治療によりなぜアパシーやアンヘドニアが改善するの?
アンヘドニアとは、やる気がわかない、楽しいはずのものが、楽しくない、よろこびを感じられないなどの「無快楽症」と呼ばれる状態です。
ドーパミンには,運動機能や学習機能だけでなく認知機能や報酬感情にも関わりがあると考えられています。アンヘドニアは、薬物療法や従来の心理療法では改善しにくいことがわかっている一方、TMS治療によりドーパミンを調整することでアンヘドニアに対する効果が期待できるのではないかと研究が近年すすんでいます。
また、アパシーはドパミン系が関わる皮質線条体だけでなく、コリン系、ノルアドレナリン系の障害により、前頭葉、前頭前皮質が関わることがわかっています。TMS治療は前頭葉にも作用することでアパシーに対し効果がある可能性があります。
パーキンソン病の心の不調に効果的な治療はありますか?
抗不安薬やSSRI、抗うつ薬などが用いられたメタアナリシスでは、パーキンソン病に伴ううつ状態に対して効果はあるものの、偽薬に優位差をもって抗うつ効果を示せるものはないという結果が出ています。
また、お薬の副作用により錐体外路系の副作用がでることにより震えがつよくなるなどの可能性もあります。特に、パーキンソン病の方は元々脳を使いながら考えることが好きな人がなることが多いです。そのため、お薬よりも、集中力や思考力などの認知機能によりフォーカスできるTMS治療がおすすめです。
参照:パーキンソン病の気分障害 永山 寛日本医科大学大学院医学研究科神経内科学分野