スポーツイップス~薬に頼らないTMS治療~

[2020.09.05]

イップスとは?

イップスとは、スポーツの動作に支障をきたし、自分の思い通りのプレーができなくなる運動障害のことです。実際にイップスという疾患はなく、職業性ジストニアに分類されることもあります。

困っていないですか?一人で悩んでいないですか? あなたはイップスかもしれません!

当院では、イップスに対してTMS治療を実施しております。下記に該当する方は一度ご相談ください。

・ある日突然今までできていたことができなくなった

・クラブを握ったとき、楽器を持ったとき、ボールを持ったときだけ身体が動かない

・得意だったスポーツができない、不安に感じる

・フルート、バイオリンなど楽器が思うように弾けない(奏楽手痙)

・文字がきれいに書けなくなった(書痙)

・野球のバット、テニスのラケットがスウィングできない

スポーツの中でのイップスの種類

  • ゴルフ
  • 野球
  • テニス
  • バスケット
  • ボーリング
  • ボート競技

イップスを治すためには適切な治療介入が必要

イップスで困っている方は多くいらっしゃいます。

関東アマチュア選手権競技の決勝出場者のアンケートでは約57名のうち38名の70%近いトップアマチュアゴルファーがイップスの経験があったという報告もあり、珍しくはない状態です。

・一人で悩んでいる

・コーチや先生に相談できない

・そのままキャリア継続を諦めてしまう方も少なくありません

または

できない葛藤に襲われ、さらにトレーニング量を増やし、かえってイップスの症状が増悪したという報告もされています。

イップスになりやすい人

下記に該当する人はイップスになりやすいかもしれません。

・プロ、アマチュアプロなど長期間その競技をやっている人

・試合や大会、選考会、発表会などある程度、プレッシャーがかかる機会でやっている人

・外向的な性格

・積極性がある

・自信や意欲がある

・神経質傾向

・不安気質

イップスの原因

近年イップスが脳の異常が原因で生じるジストニア(筋肉の無意識なこわばり)であるとの報告がされるようになりました。

ジストニアは全身あるいは身体の一部が異常に緊張して、スムーズな運動、動作ができなくなる不随意運動の1種です。

お困りの原因は脳かもしれません

人間の運動(筋肉の動き)は、大脳基底核によって調整された信号が大脳皮質に伝達され、スムーズな動きができるように制御されています。

イップス・ジストニア患者では、大脳基底核からの信号に異常が出現し、大脳皮質に異常な信号が伝達されることで、制御できない動きとして、症状が出現してしまうのです。

治らないと思っていた症状が、TMS治療で改善されることがあります。

この大脳基底核の以上に対して、TMS治療によって、症状の改善が得られたという研究も報告されています。

また

大脳基底核の調整が崩れてしまう原因には、たくさんあります。

その一つに、メンタルが原因となることがあります。

当院では、イップスに限らず、メンタルが原因で心身不調に陥ってしまった方のTMS治療を実施させて頂いておりますので、ご安心してご相談してください。

イップスの治療(治し方)

①薬物療法:β遮断薬・抗不安薬

※ドーピングになる可能性が強い

②精神療法

からだに過緊張、不安が見られるのであれば、リラクゼーションを目的としたいくつかの心理技法のトレーニングや、現場で使えるようなリラックス方法などを改善方法として扱う

⑤TMS治療:ジストニアに対する脳の調整

イップス 病院でのTMS治療

書痙の患者がTMS治療によって、改善が得られた報告があります。

      参照③

        参照④

イップスの原因と考えられているジストニアに対し、TMS治療があります。

※クリックで拡大します。

CDQ:24 ジストニアの生活の質スコアリング

※クリックで拡大します。

Toronto Western Spasmodic Torticollis Rating Scale (TWSTRS);痙性斜頸治療の評価尺度

※クリックで拡大します。

症例

当院でイップスに対して治療を行っている方のうち、10人中6人の方は10回時点で何らかの改善を自覚されました。一方で、治療を継続頂いた方のうち、「完全に症状が消失した」方はまだいらっしゃらないのが現状です。つきましては、改善を目指す上での1つの手段としてTMS治療をご検討ください。

31歳 男性 プロゴルファー

ゴルフのイップスをなおしたい

31歳男性 プロのゴルファーであり、春の大会からイップスを自覚し、コーチからTMS治療をすすめられ初診となりました。イップスの乗り越え方をしり、ドーピングなどに引っかからない薬に頼らないアプローチで、できるだけ早く治療がしたいとのことで、週5回のTMS治療を開始しました。TMS開始10回目の時に頭が暖かくなる感覚を感じ、TMS15回目にはイップスの感覚を感じずらくなり、日常生活での緊張も感じずらくなりました。TMS25回目には人の目があったとしても冷静にゲームに臨めるようになった、イップスが克服できたと話されており、今では2週に1回TMS治療でメンテナンスを行っています。

ゴルフのイップスの種類

1.パターイップス 

「打てない」:1~2mのショートパットの際にカップに届かないようなパットをしてしまう イップスの中でもなりやすい人が多いイップスです。

「強く打ちすぎる」:痙攣したように強く打ってしまう

2.アプローチイップス  

「トップ」:インパクトの瞬間にクラブヘッドが ボールの赤道に届かず、ボールの上部をたたく現象

「ダブり」インパクトの瞬間にクラブヘッドが ボールの手前の地面を打ってしまう現象が怖く なり,柔らかいタッチが出せなくなる。

3.アイアン,ドライバーイップス

 「クラブが下りてこない現象」:スイングの際 クラブが途中までしか上がらず、あるいはトップまで行ってもそこから下りてこない現象。

 「クラブが上がらない現象」:バックスイングの際に肘が曲がらず、低いテークバックになりトップまで上がらない現象。

※「アドレスから手が動かない」:アイアン、ドライバーイップス の「クラブが上がらない現象」と若干似ているが、アイアン、ドライバー以外にパターなどのあらゆるショットでも生じることがあり、テークバックを始めようとしてもクラブヘッドに根が生えたように動かなくなる現象である。

4.バンカーイップス  

アプローチイップス同様にトップとダブりが恐 怖となり、バンカーからの脱出が精一杯になってしまう。

アイアン、ドライバーイップスの「クラブが上がらない現象」と若干似ているが 「アドレスから手が動かない」タイプのイップスがある。このタイプはアイアン、ドライバー以外に パターなどのあらゆるショットでも生じることがあり、テークバックを始めようとしてもクラブヘッドに根が生えたように動かなくなる現象である。

参照

①イップスはジストニアか? : イップスに対する定位脳手術 堀澤士朗ほか 東京女子医科大学脳神経外科 日本臨床スポーツ医学会誌 23(4): S251-S251, 2015.

②検査・測定 イップスの研究(2) 八木孝彦ほか 中央学院大学 日本応用心理学会大会発表論文集 71: 76-76, 2004.

③ジストニアに対する反復継頭蓋磁気刺激 漆原良、梶龍兒 神経治療Vol23 No5(2006)

④上肢ジストニアに対する連続継頭蓋磁気刺激治療 村瀬永子 機能的脳神経外科 48(2009)176-183

⓹イップスの診断と治療 永井宏 医療法人日明会日明病院, 福岡大学医学部精神医学教室, スポーツメンタルヘルスオフィス 臨床スポーツ医学 31(10): 950-955, 2014.