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ADHDグレーゾーン/発達障害グレーゾーンとは?
ADHDグレーゾーンは、正式な医学用語ではありませんが、「ADHDの症状はみとめるものの、診断基準を満たさない」状態のことを言います。
診断基準をみたさないため、確定診断ができない状態であり障害者手帳の申請はできません。
ADHDグレーゾーンに対して、お薬で治療するメリットはもちろんありますが、副作用があったり、クセになりやすかったりというデメリットもあります。薬物治療を行う際は、慎重に検討することも必要です。
この記事では薬に頼らない大人のADHD治療や、TMS治療を用いた当院での治療症例についてお話しします。
ADHDとは?
ADHD(Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder)は、日本では「注意欠如/多動性障害」といわれています。子供の頃にADHDと診断される方が多いですが、大人でもADHDの症状に悩んでいる人はいらっしゃいます。主な症状は以下の3つです。

不注意
- 仕事や家事が細やかなところまで行き届かない
- 集中が続かず、すぐに別な事を始めたり考えたりする
- 時間管理が苦手であり、締め切りに間に合わない
- 物ごとを順序立てて行う、やることに優先順位をつけることが苦手
- 約束を守ることを忘れてしまう
衝動性
- 人が話している途中で発言したり、質問が終わる前に答える
- 人の言いかけたことを代わりに完結させてしまう
- 話すことに夢中で聞くことを忘れてしまう。
多動性
- そわそわして手足を動かしたり、いすの上でもじもじする。
- 喋りすぎて聞くことを忘れる
- 落ち着きのない人と見られることがある。
また、上の3つの特徴によって、社会生活になじめないことで「自分はダメな人間だ」と自己肯定感が下がりやすいことも問題となります。
ADHDグレーゾーンの悩み
ADHDグレーゾーンの人はある意味、ADHDの人よりも苦労をすることもあります。子供の頃は周りのしっかりした手助けがあったり、能力を直接評価される機会もすくないため、自身にADHDの素因があることに強い悩みをもちながら成長した人は少ないです。
しかしながら社会人になり、マルチタスクをしなければならない環境に入ったり、仕事の期限が定まっていたりとADHDの素因がある人は他の人と比べて苦労しながらやっと仕事を完了できます。仕事を完了できてしまうことから、一見ADHDには見えないことからも、ADHDの診断がつく人と比べて常に一生懸命働きながら自分の特性をカバーする必要があります。 そのため、ある意味ADHDグレーゾーンの人は、脳に負担がかかり疲労がたまりやすく、人の話が入ってこない、頭がぼーっとする、周りの人ができているのに自分は頑張らないとできない状態になり悩むことが多いです。
ADHDの原因
ADHDは神経伝達物質(ドパミン・ノルアドレナリン)の異常により起こるという説が多くありますが、最近では脳ネットワークの異常についても研究が進んできています。ADHDでは脳の状態が安定しないことに加え、環境要因も関連し、「物ごとを順序立てて行う、やることに優先順位をつける」といった「実行機能」が低下したり、「報酬系」と呼ばれる機能が低下して「待つことができない」といった社会的な行動障害が認められます。

ADHDの脳では何が起きている?
脳のネットワークの研究は近年、大きくすすみました。小さなネットワークも含めると数多くのネットワークがありますが、集中思考のCEN(Central Executive Network)、ぼんやり思考のDMN(Default Mode Network)、そしてCENとDMNを調整するSN(Salience Network)があります。
ADHDではDMNが過活動を起こしており、CENは低活動を示します。つまり、通常に比べてぼんやり思考にスイッチが入りやすい状態と言えるでしょう。不注意でミスをしてしまったり、ついつい衝動が抑えられなかったりするのは、DMNになりやすい状態を反映していると言えます。


ADHDの治療~3つのアプローチ~
ADHDの「不注意や多動がある方」への対処法として、対人関係能力や社会性を身に付ける「心理社会的アプローチ」と、症状の改善を目的に行う 「薬物療法」、「薬に頼らないTMS治療」があります。これらの治療は組み合わせた方がよいため、状態によっては、心理社会的アプローチ、薬物療法を行う発達障害の専門病院と併診で、当院のTMS治療を行うことをおすすめします。



当院のADHDに対するTMS治療効果
TMS治療は発達障害に効果があるのか?治療法や副作用について » 【公式】東京TMSクリニック:TMS治療専門医療機関 (tms-clinic.jp)
ADHDに対するTMS治療とは
ADHDに対する薬物療法では、ぼんやり思考のDMNの活動抑制を健常化し、DMN内部の機能的結合を改善すると考えられています。TMS治療では、DMN(Default Mode Network)とCEN(Central Executive Network)などの脳ネットワークも調整することができ、抗ADHD薬とTMS治療を組み合わせることをおすすめします。


また、TMS治療は非侵襲的で安全に治療ができるため、身体の状態(閉塞隅角緑内障、甲状腺機能亢進、狭心症、不整脈、高血圧、消化管狭窄、過敏症、うつ病、肝機能障害など)で抗ADHD薬は服用したくない、副作用(食欲低下、不眠、動悸、めまい、吐き気、口渇など)がきつい…という方も、TMS治療をADHD治療の一つにすることができるかもしれません。まずはお気軽にご相談ください。

ADHDグレーゾーンの症例
28歳女性 物忘れ、整理できない
ケアレスミスが多く、スケジュールを多く入れてしまい管理ができない
小さなころから物忘れが多いといわれていた。持ち物などの整理ができず、カバンの中がごちゃごちゃになってしまったりと、仕事でもケアレスミスで怒られることが多かった。だんだんと職場でも業務量が多くなってきてスケジュール過多になっていることに悩んでいた。他院でTMS治療をすすめられたが、1週間に1度程度しか予約が取りにくいこと、経済的な面や、遠方であることをふまえ通院しやすい当院での治療を希望された。
ADHDの心理検査では不注意が24点、12点と中等度の不注意を認め、当院ではADHDのプロトコールでTMS治療を開始した。TMS治療10回目の時には、整理整頓やケアレスミスは改善しており、タスク管理を工夫できるようになったと喜ばれていた。不注意の心理検査では24点から15点、12点から4点と改善をみとめていた。その後も、ケアレスミスは残っているものの、ミスをした後どのようにカバーすればいいのか冷静になって考えられるようになったと喜ばれていた。
37歳男性 イライラ過活動 部屋の片づけができない
ソワソワしてしまい、すぐに行動したくなることから協調性が少ないといわれてしまう
転職をした後、前職と同じように協調性がないと指摘され、落ち込む気持ちと同時に周りの環境のせいではなく自分の素因かもしれないと考え当院へ受診となった。初診時多動の心理検査が27であり、多動になり落ち着かない症状に悩まれていた。周りで話をしている人がいると引っ張られてしまうことや、いざやろうと思ったことを忘れてしまうような状態だった。TMS治療20回目の時には多動の心理検査は14まで低下しており、多動がだいぶ落ち着いたと喜ばれていた。
TMS治療を受ける前は小さなことにもイライラしたりしていたものの、だんだんと一呼吸おいて許せるようになってきたというのが大きな変化だとはなされていた。

TMS治療は発達障害に効果があるのか?治療法や副作用について » 【公式】東京TMSクリニック:TMS治療専門医療機関 (tms-clinic.jp)