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光トポグラフィー・QEEG~検査の考え方~

①光トポグラフィーとは

光トポグラフィーとは

光トポグラフィー(NIRS: Near-infrared spectroscopy)は、近赤外光を用いて生体のヘモグロビン濃度を計測することにより局所の血液量を推定し、測定部位の機能を検討します。

参照

てんかんの検査 基礎と実践 3) 光トポグラフィー検査

丸田雄一山口大学医学系研究科 脳神経外科学講座 Medical Technology 45(6): 572-576, 2017.

日本における光トポグラフィー

光トポグラフィーは2009年4月に先進医療に採択され,2014 年4月からは保険適用が認可されました。一方で,この診断補助法に対して疑問を呈した記事や,改善を要望している論文も発行されていました。

近年では、うつ症状診断補助の有効性が再議論されており、2016年に発表された光トポグラフィーによる精神疾患鑑別診断 一有効性の検討一という論文などをもとに現在の光トポグラフィーの考え方をまとめました。

参照

精神疾患の診断・治療のための 臨床検査としてのNIRS測定:福田 正人

② 光トポグラフィーの注意点

健常者と病気の判断はできない

光トポグラフィーは健常者と、病気の判別はできません。

うつ病として臨床診断されている場合の双極性障害や統合失調症との鑑別を対象としています。「鑑別診断補助」という名称が示すように,問診などによる臨床診断を基本としたうえで,光トポグラフィー以外の脳形態・機能検査や神経心理検査との組み合わせる必要があります。

参照

精神科 光トポグラフィー検査の臨床的有用性

三國雅彦 国際医療福祉大学病院精神神経科教授 / 群馬大学名誉教授

日本医事新報 (4746): 55-55, 2015.

光トポグラフィーは確定診断(診断の証明)に使えるの?

光トポグラフィー検査は精神疾患の有無を確定したり、診断を証明することには使用できません

参照

日本うつ病学会(双極性障害およびうつ病の診断における光トポグラフィー検査の意義についての声明)

光トポグラフィーは過剰診断の可能性も?

診断の一致率は光トポグラフィー検査所見より詳細な問診が上回ることから、光トポグラフィー検査所見に基づく判断が病気の過剰診断を招く可能性があるとされています。

参照

日本うつ病学会(双極性障害およびうつ病の診断における光トポグラフィー検査の意義についての声明)

光トポグラフィーの臨床における指標

  • 臨床的にうつ病と診断されている場合のみ限定
  • 鑑別診断の補助として正しく位置づけ、適切な評価ができる臨床医の判断を優先
  • 検査所見の判断を恣意的でなく研究成果に基づく厳密に行う

 

光トポグラフィーは治療効果判定には使えない

光トポグラフィーはうつ病患者の前頭葉機能において結果の再現性が高く、「状態」よりも「素因」を反映することが示唆されています。他院で治療効果判定のために光トポグラフィーを行ったという患者さんがいらっしゃいましたが、治療を行った後に光トポグラフィーを検査し、改善したかなどの治療効果判定には用いることはできないと考えます。

参照

うつ病患者のNIRSによる治療反応性と疾患鑑別への有用性 —多施設における2時点検査の結果と診断変更症例の検討— 富岡  大

光トポグラフィーを受けるにあたり必要なもの
  1. 光トポグラフィーを実施する医療機関で脳器質疾患が除外されている
    (神経内科医、脳神経外科医によりCT・MRI等を実施する)
  2. 抑うつ状態であり、うつ病の診断を受けた
    (症状が軽い状態での光トポグラフィーは不適切な結果となる)
  3. 症状や経過の特徴から双極性障害や統合失調症の可能性があると考えられている
    (詳細な問診が行われている)
参考

日本うつ病学会
(双極性障害およびうつ病の診断における光トポグラフィー検査の意義についての声明)

光トポグラフィー診断の問題点

頭皮血流の混入

光トポグラフィーの一致率は約4割程度という報告もあります。統合失調症、うつ病、双極性障害の鑑別のため、どれか一つ選べば当たるようなものと話す人もいます。

光トポグラフィーには、NIRS信号(酸素化ヘモグロビン濃度)に皮膚血流が関与していることは従来から知られていました。言語流暢性課題遂行時の信号変化のほとんどすべてが皮膚血流であったという報告や20%程度は脳血流も寄与しているという知見もあり、結論は出ていません。

NIRS信号に皮膚血流 が大きく混入していることは間違いなく,現時点での専門医による診断との一致率は,若年者と高齢者および軽症患者を除いても6~8割台 にとどまっており4割台との報告もあります。光トポグラフィーによるうつ症状診断補助の 有効性・信頼性を上げるためには,確実な頭皮血流の除去の開発が必要です。

研究前期と後期での平均波形の変化

2009年の研究前期に考えられていた各疾患の平均波形と2014年の研究後期に考えられている各疾患の平均波形は変化をしています。

 

2009年 研究前期:差が明確に認められる
  • うつ病一振幅(積分値)の低下
  • 双極性障害一ピーク(重心値)の遅延
  • 統合失調症一(タスク終了後の信号の再上昇 など)タイミング不良
2014年 研究後期:健常者と各疾患群に明確な違いが認められない>
  • うつ病群で振幅の低下が特徴だったが、振幅が上がっている
  • 双極性障害群でピークの遅延が特徴だったが、立ちあがりが早くなっている
  • 統合失調症群のタスク終了後の信号の再上昇が小さくなりタイミング不良がわかりずらい(双極性障害群の再上昇の方が大きくなっている)
  • 健常者群と双極性者障害群は,波形が類似し、視察では識別が困難である
  • 「あ」、「き」、「は」から始まる単語をできるだけ多く言い、「あいうえお」と課題前後に繰り返すなどの言語流暢性課題の波形や振幅には大きな個人差が認められる

まとめ 

光トポグラフィーは、検査を希望する専門的知識を持たない患者さんや家族から過大な期待を寄せられることが多いため、「診断補助」 という言葉の意味を十分に説明する必要です。

技術的にも現在も継続して検討が必要な検査であり、検査結果が独り歩きして、ショックをうけて動揺したり、高額な治療を強要されたなどの相談も多く、臨床家として危惧しています。当院では上記から光トポグラフィー検査は実施しておらず、光トポグラフィーに関わるセカンドオピニオンなども受け付けておりません。

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