目次
- ★アスリートのためのうつ病治療
- アスリートのうつ<br>オーバートレーニング症候群とは
- オーバートレーニング症候群のセルフチェックリスト
- オーバートレーニング症候群の治療
- オーバートレーニング症候群の治療のポイント
- アスリートに優しい 薬に頼らない心の磁気治療 TMS治療
- 東京TMSクリニックのTMS治療効果
- 東京TMSクリニックの心理検査改善割合
- 東京TMSクリニックの重症度別 TMS治療改善改善度
- 東京TMSクリニックのオーバートレーニング症候群の短期集中治療
- オーバートレーニング症候群の機序
- オーバートレーニングの検査と評価・診断
- オーバートレーニング症候群になるきっかけ
- オーバートレーニング症候群になりやすい人チェック
- オーバートレーニング症候群の分類(サブタイプ)
- オーバートレーニング症候群とうつ病
- オーバートレーニング症候群の予防・対処方法
- オーバートレーニング症候群予備軍の見分け方
★アスリートのためのうつ病治療
舞台での結果をだすため、日々の厳しいトレーニングとや激しい競争をするスポーツ選手。
ストレスにより医学的なメンタルケアを受けることに対して、「メンタルが弱い」とレッテルを貼られるかもしれない…。
メンタルケアに抵抗を感じるアスリートも少なくありません。

「スポーツ選手は心身共に強くあれ」と自分自身に対する期待も、周りからの期待も大きく、医療機関の受診をためらい、問題が表面化しないまま、病態が悪化してしまう場合もあります。
当院では【ドーピングにならないアスリートを支える心の治療】を提供しています。

アスリートのうつ<br>オーバートレーニング症候群とは
オーバートレーニング症候群とは過剰なトレーニングの負荷により、休息しても疲労が回復しなくなる慢性疲労(過労)状態です。
オーバートレーニング症候群の可能性が高い人たちは強い疲労感を感じていながらも、回りのほうが頑張っている、応援してくれている人からの期待、自分への期待を背負い、特別に休養を増やすことなくトレーニングをこなそうとしてしまいます。
トレーニングをしてもパフォーマンスが低下する一方、短期間休養してもなかなか改善しない疲労感に悩んで初めて相談に来るスポーツ選手が多いです。
順位が下がったり、けがをしたり、自分のポジションがチームメイトに替わられるなど、特に過去に収めた成功が大きい選手ほど、落ち込みは強くなる傾向にあります。

各々にちょうどよいトレーニング負荷は人それぞれ異なり、同じトレーニングを行っていても、全員が同じ疲労感を感じるわけではありません。
努力を続けるアスリートが陥りやすい状態であり、一生懸命競技に打ち込めば打ち込むほどオーバートレーニング症候群になりやすい傾向があります。
オーバートレーニング症候群のセルフチェックリスト
オーバートレーニング症候群では以下のような症状が認められます。
- □体力・スピードあるいは持久力におけるパフォーマンス低下
- □ 練習中にすぐに疲れる・ 疲労感が続く・筋肉痛
- □少ない練習量にも関わらず脈が乱れてしまう
- □思ったように体が動かない・筋肉運動の協調性の低下(イップス)
- □頭が働かない・注意力・集中力低下
- □立ち眩みが起こる・頭痛・吐き気・食欲低下
- □うまく眠れない(寝付けない・朝早く起きてしまう)
- □競技や試合に対して恐怖ややる気が低下し、自信がなくなる
- □不安・焦燥感・情緒不安定さで周りの人にも迷惑をかけてしまう
オーバートレーニング症候群の治療
オーバートレーニング症候群は重症度が高くなるほどトレーニング中止期間が長くなります。
そのためにオーバートレーニング症候群は早期発見、早期治療が必要です。
オーバートレーニング症候群の回復には時間が一定期間トレーニングを軽減させたり、休養しつつ十分時間をかけて徐々にトレーニングをもどします。1か月から数年単位で復帰まで時間がかかるケースもあるとされています。
一般的には、オーバートレーニング症候群の治療はうつ病の治療に準じ、特に薬物療法が多いです。
現在用いられている抗うつ薬としては、SSRI、SNRI、NaSSA等、睡眠障害があれば睡眠導入薬、不安や焦燥感が強い場合は抗不安薬が処方されることが多いです。
ドーピングになるかもしれないと使用を不安に思う人や、睡眠導入剤の筋弛緩作用が続いたり依存をしてしまうのではないかと将来を心配する人などもいます。
オーバートレーニング症候群の治療のポイント
アスリートのうつの大きな課題は「競技に大きな影響がでない・ドーピングにならない治療」が求められることです。
精神科の薬はドーピングにならないものも多いですが、お薬により競技力の低下がみられる可能性はないとは言えません。
抗うつ薬の増強療法、漢方薬はドーピングにあたる可能性もあり、抗不安薬や抗うつ薬の一部については瞬発力の低下や集中力の低下、筋弛緩作用で協議に影響が出るかもしれない可能性があります。
「医療機関にかかってもなかなか自分に合う治療がないかもしれない…」と悩まれるアスリートの方が多いです。
ただ、うつ状態の治療が必要な人が治療をせずに競技を行う場合と、治療をしてうつ症状を改善させたうえで競技に出る場合を比べると後者の利点は大きいと考えられます。
そのため、アスリートのうつは 「競技に大きな影響がでない・ドーピングにならない治療」、さらに「短期集中でできるメンタルの治療」が求めらます。

アスリートに優しい 薬に頼らない心の磁気治療 TMS治療
うつ状態(オーバートレーニング症候群の精神症状)に対する治療法
- 薬物治療:抗うつ薬などの治療
- 電気痙攣療法:人為的に頭部に電気を流して痙攣発作を誘発する ※重度のうつ病が適応になります
- TMS治療:頭部にコイルを当てて脳を磁気刺激する治療
- 精神療法:認知行動療法等のカウンセリング

副作用も少なく 安全性が高いTMS治療は
「薬による治療が不安」、「薬 による治療でもなかなか改善しない」「早く治療効果を望みたい」
という方におすすめです。
憂うつ気分とTMS治療の文献
お薬の治療では消化器症状や奇形、認知機能の低下、筋弛緩作用などの副作用、電気痙攣療法では、記憶障害などの認知機能障害が問題になりますが、TMS治療は軽い頭痛や軽い吐き気など副作用が少ないことが特徴です。
お薬よりも、副作用が少なく抗うつ効果が高い治療として世界ではTMS治療はうつ病の標準治療になっています。
安全、安心な治療がしたい 試合まで時間がないアスリートの方、競技に影響を出したくないスポーツ選手にも優しい治療です。

東京TMSクリニックのTMS治療効果
どの病院もクリニックも同じTMS治療を行っているわけではありません。
TMS治療は海外に10年遅れて2019年6月に保険診療になったばかりでもあり、海外のTMS治療の知識と専門性をもつか、経験症例数や、プロトコール、日本全体の他医療機関との医療連携を実施しているかなど、TMS治療の専門性に大きく違いが存在します。
研究をもとにしたTMS治療の文献では、一般的にTMS治療は3-4割の効果が認められるとされています。
当院では、研究プロトコールではなく、より治療効果を高めるための臨床プロトコールと臨床TMS治療機器を採用し8-9割の効果をみとめています。
東京TMSクリニックの心理検査改善割合

※うつ状態と集中力を評価する心理検査
東京TMSクリニックの重症度別 TMS治療改善改善度

方法
※2020年5月~2021年1月までに当院へ来院し、TMS治療を実施した全患者
男性56%、女性44%
10代:3%,20代:25%,30代:25%,40代30%,50代:12%,60代5%
TMS治療初回時・10回目・20回目の心理検査結果の比較分析
「日本人に合わせた世界標準のTMS治療」を行うため日々データを積み重ね分析し治療を改善しています。

東京TMSクリニックのオーバートレーニング症候群の短期集中治療
当院では1~2週間の集中治療にてオーバートレーニング症候群の治療として、心理検査による重症度判定、ならびに薬に頼らないうつ病治療であるTMS治療に加え、スポーツ選手が自律的に適切な休息が取れるように睡眠トレーニングを行います。
オーバートレーニング症候群の第1は休息です。
一般的に休養期間の目安は、中等症では1~2週間が基準になり 「日常生活での疲労状態が消失し、運動の意欲がわいてくるまで」とされます。
元々努力家でもある人がオーバートレーニング症候群になりやすく、「練習をせずただ休むのは非常に不安」と練習をしていないことに不安を感じ焦燥感を感じることも多いです。
「休息」=寝たきりではありません。 人間は1週間寝たきり状態になると15%の筋力が低下し、3~5週間で50%もの筋力が落ちるといわれています。
当院では、オーバートレーニング症候群に対し 1~2週間 の短期集中TMS治療を実施しております。
まずは心理検査において、オーバートレーニング症候群のどの重症度かを判断します。
軽い運動は、気分を改善し、食欲を増加させ睡眠を改善する効果も期待できるため、高い重症度出ない場合は完全に運動を禁止する必要はないと考えられます。
運動は自分の専門外のスポーツを行うクロストレーニングでもよいです。軽い運動という以外にも、自分の競技に関連したストレスがなく、よい気晴らしになるという意味もあります。また、睡眠を十分にとる、身体を意図的に休める正しい睡眠リズムを行うことも重要です。
オーバートレーニング症候群の機序
オーバートレーニング症候群は、 筋組織の変性・損傷により、炎症性サイトカインが産生されることで、脳の中の視床下部や脳の神経伝達物質異常などでおこることが考えられています。
近年、うつ病は「脳の炎症」が原因という仮説もあります。サイトカインが中枢神経系に作用し、内分泌系、自律神経系、免疫系などに影響を与えるというサイトカイン仮説がSmithにより提唱されています。
人間の脳にはBBB(Blood-brain barrier)があり、高分子の物質は脳に移行しないと今まで考えられていました。

しかしながら 低分子 の炎症性サイトカインである、Il-6、IL-1β、TNF-αなどのサイトカインが脳のバリアーを破り脳の炎症細胞であるミクログリアの活性を起こします。
そのミクログリアの活性がうつ病の症状を引き起こす本体である可能性が近年示唆されています。
TMS治療の抗うつ効果にもミクログリアが関係していると考えられており、オーバートレーニング症候群のうつ状態にもTMS治療が効果がある可能性があると考えられます。
その他にも以下の発症機序がいわれています
- 視床下部関与説
- 自律神経系の活性化:視床下部・脳下垂体ー副腎系・視床下部ー脳下垂体ー性腺系への作用
- グルタミン説:リンパ球で利用される主要なエネルギー説
- トリプトファン説:セロトニン前駆物質の低下
- グリコーゲン説:筋肉内のグリコーゲン減少
- トレーニング単調説:一定で変化のないトレーニング
- トレーニング強度説:高すぎる強度のトレーニング
- 高強度トレーニング説:酸化ストレス(好中球活性酸素種酸性能)の亢進
オーバートレーニングの検査と評価・診断
オーバートレーニング症候群で用いられる評価のPOMS2試験は65問の質問があり、感情や気分を総合的に評価ができます。
6つの要素のパターン(・Tension:緊張・Depression :抑うつ・Anger:怒り・Fatigue:疲労・Confusion:混乱)によりオーバートレーニング症候群の有無、重症度を判定します。
当院では18歳以上を対象としたPOMS2の全項目バージョンを用いて評価をしています。

コンディションが良い時には、活力が高く他の因子は低くなりVigorを頂点にした氷山型を呈します。
軽度なオーバートレーニング症候群 など急性の疲労では活力はあまり低下せず、 頂点が右方変移する山型パターン を呈します。
典型的なオーバートレーニング症候群では Vigor が低値になった谷型を呈します。
オーバートレーニング症候群になるきっかけ
オーバートレーニング症候群は、
- □不十分な休養・睡眠不足
- □過密な試合・移動スケジュール・ 不適切なトレーニング
- □高度、気温、湿度などの外的環境の要因、
- □仕事、勉強、日常生活、人間関係
などが発症のきっかけとして考えられています。
また、価値観観の不一致による葛藤や、周囲からの注目、時間的切迫感、
プライベートを我慢する社会的孤立、学業との両立、性別に関する固定観念や差別などのストレスも考えられます。
オーバートレーニング症候群になりやすい人チェック
自分自身を甘やかさないという気持ちから、自分自身の限界に挑戦するようなトレーニングプログラムを組みがちな人がなりやすいです。
- □誰かのために自分を犠牲にする
- □几帳面・ 完璧主義
- □秩序を重んじる
- □より苦しい努力をすれば報われると信じている
競技別にみると、持久系アスリート(中長距離走、水泳、自転車、スピードスケート、クロスカントリーなど)に有病率が高いといわれています。
オーバートレーニング症候群の分類(サブタイプ)
オーバートレーニング症候群の分類(サブタイプ)は2つあります。
一般的には 副交感神経タイプ のほうが、オーバートレーニング症候群として多いとされています。

副交感神経緊張タイプは抑うつ感、無力感などが特徴とされており、長距離走などの有酸素運動のアスリートが多い一方、交感神経緊張型では、不眠、焦燥感が特徴とされており、無酸素運動のアスリートが多いです。
オーバートレーニング症候群とうつ病
オーバートレーニング症候群の症状はうつ状態の症状と似ています。
ストレス反応が継続すると、中枢性に神経回路の変化が起こります。オーバートレーニング症候群の精神症状は、うつ病と同じ機序で起こっている可能性があると近年考えられています。
軽症の場合、日常生活ではほとんど症状はなく、強度の高いトレーニングの時のみ症状があり、競技成績の低下も軽度です。
中等症では日常生活や軽いトレーニングでも症状がでるようになり、競技成績は明らかに低下していきます。
重症例では日常生活でも症状が強く、トレーニングもほとんどできなくなるが不眠が起こりやすく状態によっては集中力低下や落ち込みなども見られることがあります。いわゆる、慢性疲労症候群と似たような状態になります。
オーバートレーニング症候群の予防・対処方法
・ 1年を準備期間(全体の50%)、競技前期間(25%)、協議期間(15%)、動的休養期間(10%)の4期間に区分し、トレーニングを突然に増大させない
・持久性のトレーニングは1週間に10%を超えないようにする
・トレーニングの負荷を強くするときには オーバートレーニング症候群の検査の一つである POMS2 の TMD(Total Mood Disturbance) 指標を参考にする
・トレーニング負荷は最大でも3日程度で回復させるようなトレーニングプランを作る
・オーバートレーニング症候群の教育を選手に行う、オーバートレーニング症候群になりやすい選手を周りも選手自身も知っておく。
オーバートレーニング症候群予備軍の見分け方
オーバートレーニング症候群では、起床時の心拍数や運動後の症状などが最初の症状の一つになっています。
- 運動中止後10分たっても心拍数が100拍/分以下にならない
- 運動中止後10分たっても息切れが持続している
- 運動中止後に悪心あるいは嘔吐する
- 運動実施した当日の夜に寝つきが悪い
- 運動実施した翌日の朝目覚めが悪い
- 起床時の心拍数(10拍/分以上)の増加を認める
特に、 起床時の心拍数 は疲労症状との関連性を強く認めることが認められており、起床時の疲労症状や起床時心拍数の増加 がある場合は運動トレーニング強度が強すぎたり、トレーニング量が過剰である可能性があります。
